「特許は要らない」--欧州議会で議席獲得した海賊党、主張の根拠を語る(後編)

 特許システムの廃止、著作権法の改正、ファイル共有の無料化を訴え、欧州議会で1議席を獲得した「海賊党」。その設立者で党首を務めるRickard Falkvinge氏に、海賊党を設立した経緯や主張について話を聞いた。なお、前編は記事「「著作権は5年で十分」--欧州議会で議席獲得した海賊党、主張の根拠を語る(前編)」にて公開している。

――特許システムの廃止、中でも製薬関連の特許は不要と提案していますね。製薬会社は、新薬の研究開発に時間とお金をかけていると主張していますが。

  製薬会社が公開している売り上げや研究開発などの数値を調べました。平均すると、製薬会社は約15%を研究開発に費やしています。このうちの3分の2が、ライバル企業の特許を回避するための研究開発です。つまり、研究開発の3分の2が、新薬開発ではなく、模倣した薬を開発するのに充てられています。別の見方をすると、製薬業界が純粋に新しい薬の研究開発に注ぐ資金は5%ということになります。これは、特許を持たない他の業界と同程度の比率です。

  欧州では、製薬企業の収益の83%が社会保障などの税金から支払われています。専売が生むお金をなくせば、税金を抑えられます。

――特許がなくなると、製薬業界のビジネスはどのように変わるのでしょうか?

  製薬でも、ハイブリッドカーの設計や製造でも、あらゆるプロセスの模倣は時間がかかる作業です。最初に始めた人は(特許をとらなくても)常にアドバンテージがあります。

  よく、「特許を取得できないのなら、発明する意味はあるのか?」と聞かれますが、特許からはお金を得られなくても、製品販売を通じてお金を得られます。

――特許が守ってくれないとすれば、企業は、模倣するライバルからどう身を守ればよいのでしょう?

  特許弁護士は特許は必要と言うし、企業の幹部も自分たちの業界には特許が必要と言います。ですが、研究開発に関わっている人に聞くと、特許は障害だといいます。

  スウェーデンの代表的な技術企業であるEricssonの研究ディレクターと話をしたことがあります。Ericssonは膨大な特許ポートフォリオを持ちますが、「特許がなければ、仕事は変わると思うか?」と聞いてみたところ、「お役所仕事が減るぐらいで、大きな変化はないだろう」と答えました。

  模倣する企業が現れるのは、市場には良いことです。これこそ競争です。

  実際のところ、特許が下りるのは製品が古くなってからのことです。携帯電話を見てみましょう。6カ月で新しい携帯電話を買い換える人もいると思いますが、携帯電話で申請した特許が下りるのは、ユーザーがすでに新しい電話に買い換えた後かもしれません。

  成熟市場になると、大企業が集まり、お互いの特許リストを基にクロスライセンス契約を結びます。お互いの特許の利用を認めるものですが、これは市場の競争に悪い影響を与えます。イノベーターは、既存技術を積み重ねて(特許を利用して)革新を生み出しますが、クロスライセンスはイノベーションや競争を排除します。このように、特許は多くの場合、不要であるだけでなく、悪い害を与えているのです。

――現時点でわれわれの知的インフラが特許や著作権を土台としていることを考えると、海賊党の主張は急進的に映ります。われわれは個人レベル、社会レベルで、海賊党の主張する世界に移行する準備ができているのでしょうか。

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