今夏に新はてなブックマーク登場--その進化と情熱 - (page 4)

鳴海淳義(編集部)2008年05月13日 08時00分

--仮に「原爆の作り方」のような危険なサイトが上位にランキングされていたとして、「あれは危ないから削除しよう」とか、そういった対策はされているんですか。

 そういうのはあまりないですね。アダルトでこれはまずいだろうなというものぐらいはやりますけど。基本的に情報をフィルタリングするのはよくないと思っています。それに対して、「そういうものを閲覧できる状態にしているのは問題じゃないか」という別のカウンターの情報が上がってきて、何らかの社会的な動きがあって、その情報が見られなくなるというのはOKだと思うんです。

 でも、その情報を握っているところが上から現れて、簡単にそこを見られなくするというのは検閲することになるので、あまり自由じゃないなと思うんです。

 だから極端な話、はてなのすごい社内機密が漏れて、人気エントリーに上がってきたとしても、はてなはそれをフィルタリングしないと思うんです。それをやってしまったらおしまい。それは絶対に譲れない線なので、人気エントリーに上がってみんなが見てしまったら、「申し訳ございませんでした」とちゃんと謝るのが紳士的な態度で、見られなくして蓋を閉めるのは紳士的じゃない。基本的には、スパムとアダルトサイト以外はフィルタリングしていないですね。

はてなブックマークはSEOに有効?

--スパムとはどういう状態を指すのですか。

 スパムはひどいですよ。SEO目的でブックマークにどんどん自分の会社の商品のページを上げたりとか。はてなは一応アカウントをたくさんとるのは禁止されていますが、1人で50ぐらいのアカウントをとって、50ブックマークをつけて人気エントリーに上げる人がいるんです。効果はないと思うんですけどね。

--ソーシャルメディアオプティマイゼーション(SMO)などと呼ばれて、効果があると言われますが、どうなんでしょうか。

 はてなブックマークに1件追加したぐらいで、ページランクというか検索エンジンの順位は上がらないので、やめてほしいですね。もっと他のことをやったほうがいい(笑)。ソーシャルブックマークに一生懸命登録している人は、「これをやっておくとSEO効果がある」っていう情報に流されているんですよ。

 でも、実際には登録しても全然SEO効果がないばかりか、今はスパムを自動で判定する仕組みも作っているので、その労力が全部無駄になるだけです。そんなことをしている暇があったら、もうちょっとサイトを面白く作り替えたほうが良いんじゃないかと思います。

--改善のポイントとして、ほかにありますか。

 あとは検索ですね。はてなブックマークをよく使っている人は、以前に登録した記事を探そうと思ってもうまく探せないんですよ。それをちゃんと探せるようにすることは、かなり大きい課題ですね。あとはユーザーインターフェースと、スピードの問題ですね。

--具体的な方法は模索中ですか。

 検索は、自然言語処理的に検索エンジンを作るようなプロセスを経てちゃんとやりましょうね、というのが基本にあります。スケーラビリティーも作り直すときに考慮して作っているので、新バージョンとしてオープンした直後の状態はかなり速くなっているはずです。

 ユーザーインターフェースは、今まで僕が片手間でデザインしていたんですが、専門のエンジニアにやってもらいます。

夏には新バージョンに、カウンターメディアを目指す

--リリースのスケジュールは決まっていますか。

 梅雨時ぐらいまでには第1弾を出したいと思っていたんですが、京都への引越しとか結構いろいろあったので、あまりスケジュール通り進んでいないです。もしかしたらちょっと遅れて夏ぐらいになるかもしれないですね。そこから半年ぐらいかけて課題を潰していって、今年の冬ぐらいには、振り返ると1年前に比べて良くなっているという状態にしたいです。

--最終的に、はてなブックマークをこういうものにしていきたいというビジョンはありますか。

 やっぱりメディアですね。重要なのは、すごく大きい問題が起こったとき、何が起こっているか知りたいとき、はてなブックマークを見に行けばわかる、というメディアにすることです。

 自分でそういう利益が得られたということもありました。JRの福知山線で事故があったとき、職員が救助に行かないで、途中で降りて業務に就いたとかいうのがすごくバッシングされていましたよね。

 メディアの論調だけ見ていると、根性論で「おまえら全員救助に行け」という話になっていましたが、一方で、その人たちが救助に行って日常業務を遂行しなかったら、他のところにも影響が出て二次災害につながる可能性があるという話がはてなブックマークが人気エントリーになっていました。テレビのニュースを見ていただけだったら絶対にわからなかったことだと思います。

 そういう他のメディアでは見られなかったであろう情報に触れられたということは、自分の中ではてなブックマークを作ってきて一番良かったことなので、それを他の人にも提供できるメディアでありたい。カウンターメディア、カウンターカルチャー。多様な情報に触れられる二次ソースみたいな感じになれたらいいかなと思います。

080513_hatena4.jpgインタビューは卓球台を挟んで

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