音楽番組などを運営するMTV Networksの子会社バイアコム インターナショナル ジャパン(VIJ)は10月より、同社の番組をニワンゴの「ニコニコ動画(RC2)」で配信する。これまでユーザーが著作権者に無断でアップロードしたコンテンツが人気を集め、プロモーションの一環として権利者が追認した例はあったが、大手コンテンツホルダーが公式に番組提供を表明したのは初めてだ。
ニコニコ動画は会員数342万人、1日の閲覧数が約5500万ページビューにものぼる人気サービスだが、ユーザーが権利者の許可なくアップロードしたコンテンツも多く、それを問題視する人もいる。
コンテンツの著作権はメディア企業の生命線とも言える。VIJとしても、そこを放棄したわけではなく、むしろ積極的に守っていく考えだという。VIJがニコニコ動画に番組を提供することを決めた理由や、著作権侵害コンテンツ、MADと呼ばれる二次著作物への対応について、デジタルメディア事業本部 本部長代理の島田和大氏に話を聞いた。
我々は多くの優良コンテンツを持っています。そのコンテンツ資産をデジタルメディア上で最大限に活用するというのが我々のミッションです。そのための取り組みとしては2つあります。1つは自社サイト上でコンテンツを配信し、多くのユーザーを集めて広告で収益を得ようというものです。ただ、自社だけではできることに限界があります。そこで、配信等に強みを持つ企業と提携し、他社が運営するメディアにコンテンツを提供する取り組みを積極的に進めています。
他社に提供する場合には、コンテンツに対してライセンス費を受け取る方法と、共同事業としてVIJがメディア作りにも関わり、その収益を分け合う方法の2つがあります。今回のニワンゴとの提携は、後者の共同事業型にあたります。
YouTubeをはじめとして、ユーザーが自分でコンテンツを作成し、他の人と共有する「ユーザージェネレイテッドコンテンツ(UGC)」が世界的に台頭しています。UGCがネット世界に与える影響力がどんどん大きくなっていることは否定できません。これまではメディア側がユーザーにコンテンツをプッシュするという形でしたが、今はユーザーが自分で見たいものを見たり、作ったりするようになっています。コントロール権はユーザーに移っているのです。
UGCの中には著作権を侵害しているものもあります。それについては、我々はメディア企業として断固反対していきます。ただ、UGCを中心に据えたメディアとどう付き合っていくかと考えたとき、採りうる選択肢は2つあります。1つはUGCサイトと敵対関係になること。もう1つはパートナーシップを組んで、ユーザーにメディア企業としての姿勢――著作権保護は譲れないということを啓蒙していくこと。
我々は後者を選びました。ニコニコ動画と敵対するのではなく、ニコニコ動画が万人に受け入れられるような成熟したメディアにするために、ニワンゴと共同で取り組んでいこうという考えです。
われわれは複数のサービスを横に並べて比較したわけではありません。(ニワンゴの親会社で、ニコニコ動画のシステム開発などを担当している)ドワンゴとの人的交流などが昔からあり、話をしている中で決まりました。
ただ、パートナーとなるにあたって、どんな著作権保護施策を取っているのかという点は重視しています。ニワンゴは今後、積極的に著作権保護への取り組みを進めていきます。
ニワンゴは著作権侵害コンテンツをアップロードしてはいけないという基本姿勢を持っています。権利者からの依頼があればそのコンテンツを削除しますし、そもそも著作権侵害コンテンツがアップロードされないようにする取り組みも進めています。
そのために、著作権を保護できるシステムを開発し、それをVIJが利用できるようにしました。我々がニワンゴに依頼して削除してもらうのを待つのではなく、能動的に対応できるようになっています。もちろん、著作権侵害コンテンツを削除することに関して、主体的に動くのはニワンゴです。ただ、問題があるコンテンツを見つけた場合に自分たちでも対応できるようになっているので、VIJが持つメディア企業としての姿勢を守れる。その点を評価しました。
編集部注:ニワンゴでは、権利を侵害している投稿動画を権利者が見つけ、削除申請をした瞬間からその動画が再生されないようにするシステム「権利侵害対応プログラム」を開発した。利用は登録制で、現在VIJを含め14社が登録している。また、一度削除した動画は自動検知により再度投稿できないようにしている。これは、同じようなファイルが何度もアップロードされるのを防ぐものだ。
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