実際に開発した画像検索技術をウェブの検索サービスに生かすといったことはもちろんあると思っています。ただ、我々が想定しているのは、どちらかというと広告や医療、教育などの分野です。
広告の分野では、テレビの映像中に映った商品画像を識別して、商品販売サイトに誘導するといったことが考えられます。
医療の場合はレントゲン画像など大量の画像が存在するにもかかわらず、そのデータを時系列的に整理するような取り組みはまったく進んでいません。しかし、これが実現すれば、いろいろな診断に使ったり、同一症例の経過観察をしたりといったことが可能になる。こういった画像のマイニング技術は多くのベンダーが求めているところでもあります。
教育の分野では、今後、団塊の世代が大量に退職する時代が来て匠の技を残していくときに、いままでは「あうんの呼吸」でやっていたものを画像や映像で伝承するようになるでしょう。
それから、証券取引などの分野では、いまGoogleがやっているように一度データを格納して検索するのではなく、データをサーバに通過させながら異常取引を検知するというような、リアルタイムの検索が求められてくる。
また、センサーネットなどが広がっていけば、コンビニのPOSデータやトラックの配送状況だけでなく、どのトラックに今どんなものが積まれていて、どういう状態にあるかというようなこともリアルタイムに分かるようになる。これを活用して物流の最適化を図るといったことも起きるでしょう。
このほか日本が強い分野、たとえば情報家電に搭載するとか、ものづくりの強化に使うといったことも考えられます。
そうですね。ただ、例えば今回の成果を利用して、ベンチャー企業が面白いサイトを作っていくというようなことはぜひあって欲しいと思っています。
ベンチャーがいかに軽い負担で参加できるようにするかというのは大きな問題です。これまでの官主導のプロジェクトでは、費用の一部を税金で負担できたとしても、結局は各企業が持ち出しで参加していました。しかし、それをベンチャーがするのは無理でしょう。
成果の一部を特定の企業に開放するとか、コンソーシアムが用意した大規模サーバを使ってテストをしてもらうとか、開発段階からソースを特別に公開して使ってもらうといったことが考えられます。
それからもう1つ、外資企業の参加をどうするかという問題があります。現在参加が決まっている外資企業は日本IBMの1社だけですが、個人的にはもう少し増えてもいいと思っています。大量情報処理技術を持つ国としては北欧や豪州もありますので、そういったところと連携していけるといい。
あまり日本では話題になっていませんが、この冬にあった経済協力開発機構(OECD)の会議では、検索エンジンが大きな議題になっていたようです。情報経済社会の基盤技術が1社の独占になるのはまずいという議論ですね。これこそオープンにしないと、利用者側の意見が反映しにくい。
アルゴリズムを独自に作ることを否定はしませんし、そのほうが開発が早いかもしれません。でも、それが仮に今後、全産業に使われるようになるのではあれば、利用者のフィードバックをもとに改良する仕組みというものがあったほうがいい。
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