Ray Kurzweilは数々の発明を通して、20世紀後半に名を馳せた発明家である。
テキスト音声変換装置やCCDフラットベッド・スキャナーの開発者として知られるKurzweilは今、人間とマシンが融合し、技術革新が未曽有のスピードで進む未来を実現するために、多忙な日々を送っている。
「Singularity(特異点)」と呼ばれるこのコンセプトは、つい最近まで、Vernor VingeやKen MacLeodといったSF作家の領域と考えられていたものだ。
Kurzweilは新刊「The Singularity is Near: When Humans Transcend Biology(『特異点は近い:人類が生物学を超えるとき(仮題)』)」の中で、技術開発はとどまるところを知らずに進展し、その指数関数的成長によって、人類は2045年までにSingularityに到達すると主張している。
彼の壮大な理論の詳細は本書に譲るとして、その内容を要約すると次のようになる。ムーアの法則やその他の指数関数的成長によって、2030年には人間の脳に匹敵する能力を備えたコンピュータを1ドルで購入できるようになる。情報技術は指数関数的に成長し、それに刺激されるように、生物学、ロボット工学、ナノテクノロジー、および人工知能が進化する。この結果、世界をひっくり返すようなことが起きる。たとえば、人間の寿命が劇的に延び、能力が増幅され、人間は事実上、全知全能の存在となる・・・。
この予測がある種の信憑性を持つのは、彼が過去の著作「The Age of Intelligent Machines」と「The Age of Spiritual Machines(邦題『スピリチュアル・マシーン―コンピュータに魂が宿るとき』)」で、自らの未来予測に平均以上の精度があることを証明しているためだ。Kurzweilは2002年に「発明家の殿堂」入りを果たした。Lemelson-MIT賞を受賞し、賞金50万ドルを獲得したこともある。栄えある米国技術栄誉賞の受賞者でもある。
CNET News.comは先ごろ、Kurzweilにインタビューを行い、新刊の宣伝活動、人間とマシンの融合に関する見解、超富裕層が最初に超知性を手に入れることの政治的影響などについて話を聞いた。
--新刊の宣伝でお忙しいことと思います。宣伝ツアーの首尾はいかがですか。
上々です。先週は7回の講演をこなしました。「Accelerating Change Conference」での基調講演、Googleや「Software Development Forum」での講演などです。George Gilder主催の「Telecosm」カンファレンスでも基調講演を行いました。この会議の名称は、彼の著作にちなんだものです。明日はMITで話をする予定です。
--先週のサンフランシスコでの講演では、Microsoftの元CFO、Michael W. Brownとあるプロジェクトを進めているという話が出ました。一緒にヘッジファンドを創設する計画だとか。この件について、もう少し詳しく教えていただけますか。
これは大がかりなプロジェクトで、6年ほど前から取り組んでいます。私の専門領域を応用して、かすかなパターンを捉え、技術予測の手法を使って、運用を行うというものです。6年前には、このプロジェクトを完全な形で実現することはできませんでした。株価データに瞬時にアクセスする方法がなかったからです。オンラインで効果的に注文を出すための技術がありませんでした。5秒で意思決定を下さなければならないのに、コンピュータの分析に2週間もかかっていたのでは話になりませんからね。
(私のシステムの)予測は完璧ではありませんが、運を天にまかせるよりはずっとましです。これはカジノで賭け事をするようなものです。あちこちに賭ければ、勝つときもあれば、負けるときもある。しかし、儲けは着実に出ています。まだ損をした月はありません。年間の利益率は80%から100%となっています。
--ヘッジファンドの顧客層は、いつ頃からこのファンドを購入できるようになるのですか。
今はこの仕組みの有効性を証明するために、個人的な資金を使って運用を行っています。ヘッジファンドは1月に創設する予定ですが、このファンドを購入できるのは、われわれの投資家に限られます。
--あなたは指数関数的な成長についてよく語っておられますね。株式市場も例外ではないと思いますが、ダウ工業株30種平均は2000年から約1300ポイント下がっています。取引コストと実質インフレ率を考慮すれば、年6%から7%は失ったことになるのではありませんか。
指数関数的に進化するのは、情報技術のパワーと導入率です。株式市場にも、古いビジネスモデルを採用している企業はたくさんあります。しかし長期的に見れば、株式市場は間違いなく指数関数的に成長するでしょう。われわれが使用する指標は、驚くほど予測可能性の高いものです。しかし、景気循環は避けられません。
--Nasdaq総合指数はどうでしょうか。Nasdaqに属している企業は、比較的新しいビジネスモデルを採用しているはずですが、Nasdaq総合指数も、最盛時と比べると50%以上下げています。
すべてのハイテク企業が成功するわけではありません。創造があれば、破壊もあります。企業は自社のビジネスモデルを定期的に見直す必要があります。インターネット広告は金にならないといわれたのは、わずか3年前のことです。株式市場には独特の心理が働いています。景気循環は(技術面の)革命の予兆であり、現在はEコマースが力強く成長しています。
しかし、これは株式市場のすべてに当てはまる理論ではありません。株式市場では、非常に悲観的なものから、非常に楽観的なものまで、他種多様な心理が働いているからです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」