ペンシルバニア大学ウォートン校の研究者2人が、オンラインレコメンデーションサービスはユーザーが出会う商品の多様性を損なうかどうかをテーマにした論文を2007年9月下旬に発表した。この研究のタイトルは「Blockbuster Culture's Next Rise or Fall:The Impact of Recommender Systems on Sales Diversity」(市場を席巻した方式の趨勢はいかに:販売商品の多様性に対するレコメンデーションシステムの影響)というもので、わたしはPaidContentでこの論文のよい要約を見つけた。
世のあらゆる指標がレコメンデーションエンジンの重要性が増していくことを示しており、この議論は検討しておくべきだ。eBayのStumbleUponの買収からCBSによるLast.fmの買収、そして10月のMSNBCによるNewsvineの買収まで、レコメンデーションエンジンには巨額な値が付いている。Read/WriteWebでもいくつかの新興企業について扱ってきており、今後もどんどん成長していくことは確実だと思う。
より重要かもしれないのは、さまざまな新しい発見をもたらす「ロングテール現象」が新しいウェブの実力主義的な性質と民主的な性質において重要な要素となっていることだ。
また、よいレコメンデーションエンジンは単純に楽しいものでもある。
少し考えてみるだけで、この研究結果はレコメンデーションエンジンの固有の性質の分析というよりは、訓話としての意味が大きいように思えてくる。他の人と議論をしてみて、多くの人がこの研究について、明らかに間違っているあるいは明らかに正しいと簡単に意見を変えてしまうことを発見した。これは見た目よりも複雑な問題だ。
レコメンデーションエンジンは、単純に「商品Xを好む人たちと商品Yを好む人たちの間の相関が高い」ということを発見する以上の賢いものを目指している。例えば、システムの他のユーザーへの商品推薦の結果から、比較的人気のないものを強調することでこの問題を解決できるかもしれない。これをうまく実現することは、言うほど簡単ではないだろうが、これによってレコメンデーションエンジンがロングテールを拡大することができるように思える。しかし、研究の議論は重要だ。
ウォートンのサイトにあるこの論文の要約には、次のような結論が紹介されている。「一般的なレコメンデーションエンジンは、販売実績と消費者の評価に基づいて推薦を行うため、限られた履歴情報しか持たない商品は、仮によい評価を持っていても推薦することはできない。これにより、雪だるま式に豊かなものがより豊かになる効果を生み出し、商品の多様性は狭まる」と著者は言う。
さらに、Facebookのアプリケーション環境についても議論されている。Facebookの環境では、ロングテールは持続しない。TechCrunchで行われたこれに関する議論も参照してほしい。
著者は、個々のユーザーは常に新しい商品にさらされているが、すべてのユーザーが同じ新しい商品にさらされているという。この結果、個人としては多様性が大きくなるが、全体としての多様性は狭まる。
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