自社の強みはあえて公開
「Webサービス」。私が初めてその言葉を聞いたのは、確か2000年頃だったと思います。
企業の持つコアデータやそれにまつわる各種機能をコンポーネント化してウェブ上で公開し、あらゆるアプリケーションからその機能を利用可能とするもの、それがWebサービスです。Webサービスは、ウェブサイトとウェブサイトが連携し、新しいウェブの機能を形成するとして、次世代のウェブに欠かせない技術だと当時は大きく取り上げられていました。
あれから5年あまりの時間が過ぎた今、Webサービスの現状はどうなっているのでしょうか。当時私は、「5年もたてば、多くの企業がWebサービスでさまざまな機能をウェブ上に公開し、世の中のウェブサイトは勝手に連携しあって面白いことがいろいろできるようになっているだろう」と思っていました。しかし現実にはそれほどうまくいかなかったようです。一部の先進的な企業がWebサービスに取り組み、実際にその成果をウェブ上で公開していますが、こうした動きは一般的ではありません。
なぜWebサービスは思ったほど浸透していないのでしょうか。その理由として、Webサービスの核となる技術仕様の標準化が終わっていない、Webサービスを扱うフレームワークなどの技術が成熟していない、各企業にWebサービスを設計できる技術者がいないなど、多く挙げられていますが、最も大きな原因は、企業がWebサービスを提供することに意義を見出せていないためです。
企業としてWebサービスを提供する場合、誰でも提供できるようなものを公開しても意味がありません。Webサービスとして提供する価値のある、その企業独自のデータや機能を提供しなければならないのです。しかし、一般的な経営手法では、自社の強みであるコアバリューは非公開のまま戦略を展開しています。それをあえて公開するとなると、それ相応の強い動機が必要です。Webサービスの現状を見るに、その動機を見つけた企業はあまりなかったことが伺えます。
Amazon成功の強みをしっかり踏まえる
一方で、Webサービスを有効活用している企業について考えてみましょう。Webサービスの雄、Amazonです。
Amazonといえば、世界でも指折りのECサイトです。インターネットビジネスにおけるケーススタディでは常に取り上げられ、彼らがなぜここまで大きくなったかという議論にはいつも注目が集まります。
Amazonの持つ強みとしてよく取り上げられるのは、徹底的なコスト管理が行われている自社の物流センターや、ユーザビリティを徹底追求したウェブサイト、サイトオープン当初から集められている膨大な商品レビュー群などがあります。しかし、Amazonの提供するWebサービスが同社にもたらした利益についてはそれほど知られていません。
AmazonのWebサービスについて説明する前に、まず頭の中で適当に書籍や映画の名前を思い浮かべてください。浮かんだものをグーグルで検索してみましょう。検索結果の先頭あるいは2番目あたりに表示されるサイトはどこでしょうか。おそらくAmazonのページが表示されていることでしょう。
検索エンジンは「インターネットの扉」とも言われています。すべての人が、検索エンジンを利用して目的のサイトにたどり着くためです。検索エンジンで上位を獲得できれば、そのウェブサイトの売り上げは飛躍的に向上します。検索結果の上位を獲得することは、昨今のウェブマーケティングにおいて最重要課題であり、それ故にSEO(サーチエンジン最適化)やSEM(サーチエンジンマーケーティング)が大きなビジネスとなっているわけです。
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