創業期の資金集めの苦労は、どのような起業家にもドラマがあり、面白いストーリーがつきまとっています。「私はいかに創業資金を調達したか?」というテーマで1冊の本を作れば、起業家にとって非常にスリリングで興味深いものができるのではないかと思います。起業家と資金調達は、(特に優秀な財務担当を雇い入れるまでは)切っても切れない縁なのです。
では、今週から2回にわけて具体的にシードマネーの探し方をお話ししましょう。
ベンチャーキャピタルはシードマネーは出さないのが普通
米国式のベンチャー育成用語になりますが、米国のVC業界ではベンチャーを立ち上げ、軌道に乗せていくまでの資金を、その段階に応じて命名しています。シードマネー、ファーストラウンドファイナンス、セカンドラウンド、サードラウンド、メザニン(中2階の意味。IPO直前の資本政策を意味する)、IPO(ご存じ、株式公開)、セカンダリーオファリング(公開後の時価発行増資)などです。
プロのキャピタリストは、その会社がどの段階の資金を必要としているかによって、自分の扱うお金が適切かどうかを判断します。端的に申しますと、VCはシードマネーの出し手ではありません。シードマネーを利用して創業し、しばらくして目鼻がつき、会社というハコができてから、はじめてVCの対象になりうるのです。では、シードマネーはいったいどこからどう調達すればよいのでしょうか?
さまざまなシードマネー
以下おもいつくままにシードマネーの出所を列挙します。
などの手段があります。このうち最初の3点、つまり
については、解説不要でしょう。いまも昔も一番の王道です。まずはこれを追求すべきです。この3点だけでも、創業メンバーが3人もいれば、なんとか1000万円は集まるはずです。
では、もうすこし距離の離れた人たちからの調達は具体的にはどうやるのでしょうか。それぞれについて順次、解説しましょう。
エンジェルはどこにいる?
シードマネー段階での投資を頻繁におこなうお金持ちの人たちがいます。彼らをエンジェルといいます。つまり起業家にとって、まだ海のものとも山のものともつかない事業計画の段階で投資してくれる、ありがたい「天使のような」人のことです。米国ではこのエンジェルの存在が起業促進効果で非常に大きく、逆に日本にはエンジェルが少ないため、最初の一歩が踏み出せずにいる起業家が多いのです。ではエンジェルとは具体的にどういう人でしょうか?
パターンとしては、
というのが多いようです。いずれにせよ、彼らの動機は、名誉を得るための単なる篤志家的なものではありません。やはり株式を所有しそのキャピタルゲインを期待しています。当たり前ですが。ただ、他人さまの金をあずかって純粋にリターンの極大化を追求するVCと異なり、「キミに惚れた」といった情緒的な投資もあるようです。
では、実際にどうやってそういう人たちとめぐり合えばいいのでしょう?正直なところ私もこうすれば必ず出会えるという正解は持ち合わせていません。起業家志望者が集まりそうな会に頻繁に顔をだし、別の人から情報を仕入れるとか、自分のあこがれる経営者に直接手紙をだして面会を要請し、エンジェル的な人の紹介を乞う、などが考えられます。いずれにせよ、強い意志があり行動力が伴えば、おのずと道は開けると信じてください。
私が知る特にユニークな例は、すでに上場まで果たしたある若手社長の話。彼は創業前、毎日夕方になるとホテルオークラのバーに入り浸り、バーテンさんと親しくなって、なじみのお金持ちへの紹介を頼んだそうです。そんなところからエンジェルを見つけたとは、たいした根性ですね。
人と人との出会いは摩訶不思議なもので、神様のお導きというほかないような展開になることがあります。それもひとつの「強い運」といえましょう。私の友人で井浦さんという方が主催される日本エンジェルズ・フォーラムという組織があり、エンジェルと起業家のお見合いの場を設定していますので、ここにアプローチしてみるのも手でしょう。エンジェルズ・フォーラムは、もと日銀マンで、スイス、バーゼルの国際決済銀行に勤務されていた井浦さんが、おおいなる志のもとに組織された集まりです。今後のさらなるご活躍に期待したいと思います。
(以下つづく)
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