起業は楽しい!
「起業家というキャリア」もついに最終回を迎えました。私がこの連載で申し上げたかったことは、「自分で会社をおこすということは、それほど特別なことではない。ステップを踏めば、確実に可能になっていく。またリスクもとれる範囲でコントロールできる。資金もちゃんとやれば調達できる。心に期するところのある人、我こそは、と思う人は怖がらずにやってみよう」ということです。ただし、誰もが向いているというわけでは、もちろんありません。人間には分相応な役割があります。起業家という人種は、やはり平均的な日本人とはいろいろ価値観が異なるようで、向き不向きはあります。どんな人が向いているのかはこの連載の最初のほうをお読みいただければわかるかと思います。
日本には起業家が不足しており、そんな人を後押ししようという仕組みも整備されつつあります。日本経済が大物起業家の出現を待ち望んでいるのです。ですから、我こそはと思う人は、ぜひ起業を志していただきたい。もちろん、起業にはうまみもたっぷりあります。そうです、「起業は楽しい」のです!
「そんなに気楽に起業をすすめるのは無責任じゃないか。失敗したらどうしてくれるんだ?」と問いかける人もいるかもしれません。しかし、起業するという決断は、完全に自己責任においておこなわれるべきことです。成功も失敗も全部自分に起因します。先ほどのような問いをする人はおそらく起業しないでしょう。逆に、自分の人生を自分で舵取りしたい、一時的な失敗も成功への道程として味わいたい、と強烈に思う人が起業家になるのだと思っています。
AmazonのJeff Bezosの「後悔極小化思考」とは?
私は起業家Jeff Bezos(Amazon.comの創業者)にシアトルで直接会ったことがあります。Jeffは、私にとって、インターネットビジネス界の最高のヒーローでした。私は日本でのAmazon進出をお手伝いしたいという趣旨のメールを書いて、会いに押しかけたのです。1998年の秋のことです(余談ですが、その結果として、わたしの相棒の西野君がアマゾン ジャパンを立ち上げました)。
Jeffは30歳のとき早くもD.E.Shaw というヘッジファンドのシニアバイスプレジデントでした。つまりニューヨークで羽振りのいい生活をエンジョイしていたのです。それなのにそのような生活を捨て、妻と犬とでシアトルをめざし、Amazonを創業。そして、現在の大成功に到っています。
そのJeffがある雑誌のインタビューに答えていた言葉はとても面白いものでした。第9回でも触れましたが、ここでもう一度ご紹介しましょう。彼の言葉を簡単にまとめるとこうです。
(Q)「なぜ裕福なニューヨークの生活を捨て、ゼロからAmazonをやろうと決意されたのですか?」
(A)「インターネットが急速な勢いで伸びているのを目の当たりにしたとき、僕はregret minimization frameworkという考え方を自分に信じ込ませたんだ。つまり、自分が80歳くらいになって死の床にあって自分の人生を振り返ったとき、後悔することがもっとも少なくなるように生きよう、と。投資銀行での業績や期末のボーナス がどうのこうの、とかそんなことは、いまは一喜一憂するけれど、80歳になったら全く覚えているわけないんだ。ところが、もしこのインターネット革命の波に乗れたにもかかわらず、乗らずに80歳を迎えたとしたら、悔やんでも悔やみきれないほど『自分はアホだった』と後悔するに違いないと確信したのさ。そうなったらぜんぜんリスキーなんて思わなくなった。すぐ行動したよ」
なるほど、と思いませんか。この考えは私も大好きです。そういえば、楽天の三木谷社長も、日本興 業銀行のエリート銀行員をやめて楽天をつくるとき、「自分はリスクテイカーではなく、リスクアバーター(averter:回避者)だ」と言っていました。人生を後悔するリスクを徹底的に避けるという意味ですね。
ベンチャーは、冒険です。未知なるものとの遭遇です。冒険は人の心を躍らせます。結果がどうなるかわからない、だからがんばる。結果を出そうと必死になる。何かを成し遂げようという情熱的な時間に価値を見出す。そんな起業家にあなたもなりませんか。
もしあなたがインターネット応用分野での起業をお考えなら、ご縁があれば、当社でも創業の立ち上げをお手伝いしますのでメールにてご連絡ください。
長い間、「起業家というキャリア」のご愛読、誠にありがとうございました。あなたの起業に神様のご加護がありますように! Good luck and good bye!
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」