日本の中核産業のひとつである家電産業の再編に関する話題が尽きない。しかし、単純に家電企業の数が少なくなればいいというものではなく、その質的な業態転換を伴わなければ、再編という少なからず血を流す行為を正当化する根拠は薄いのではない か。
これまで世界的にも優位といわれてきた日本の家電産業にも、合従連衡の動きが明確に見られるようになってきた。背景には、国内市場へ海外の低価格家電企業やアップルなど優れたデザインとサービスを伴う製品を前面に打ち出した企業が相次ぎ参入した こと、世界市場では携帯電話端末など先端的な製品ジャンルでの低迷、アップルのiPodのようなイノベーティブな製品提案力の低下による存在感・ブランド力の喪失があるだろう。
結果、7月には日本ビクターとケンウッドが経営統合という動きをとった。そして、今月に入ってからは、かねてから話題のあった三洋電機が携帯電話部門を京セラへ売却するという話に加えて、ソニーが半導体CELL製造設備を東芝へ売却という報道、シャープによ るパイオニアの実質的な買収合意など家電業界の再編が活発化しつつある。しかし、中長期的に見て既存事業者間での再編といった生易しい発想では、デジタル化という本質的な波を家電業界が乗り越えられるのか疑問が残る。
金融業界から産業を眺めるアナリストたちは、その詳細はともかく、日本の電機産業は企業数が多すぎる、といった発言を繰り返してきた。しかし、その根拠は海外と比べて、という比較的脆弱なものが多い。そもそも多すぎるといったところで、電機という事業領域の定義次第であり、それが必ずしも正しいものであるとは思えないというのが個人的な感想だ。
だが、「総合電機」と絞り込むというのであれば話は違う。彼らの指摘はある程度まで正しい意味合いを帯びる。重電を含めるかどうかは別にしても、白モノ(生活家電)から黒モノ(音響映像情報家電)まですべてをラインナップすることを是とした 全方位戦略では、仮に国内市場だけではなく、海外市場を視野に含めても「帯に短し襷(たすき)に流し」という状況であることには変わりがないからだ。加えて、iPodやiPhone、AppleTVを積極投入するアップルなどのように、非家電メーカーの家電領域への本格参入により、本質的な意味での挑戦状を送りつけられている状況では、アレもコレもすべてやるほどの体力や根拠を持つものは少ない。
そこでようやく始まった「帯に・・・」といった状況からの逸脱の試みだが、どうも様子がおかしい。
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