初めての社会人生活、あるいは新たな職場での生活を迎えた人も多いだろう。昨今、転社や転職も珍しくはないが、多くの積極的な人生を過ごしたい人が求める傾向として「デザイン」と「クリエイティブ」というキーワードが見えてきた。漠然とした新生活の中にあって、このキーワードを知ることで、より有意義な方向付けが可能になるかもしれない。
最近、ITとかメディアといった領域を区切る境界線が曖昧になってきている。
と、同時に「上流」とか「下流」といった事業の工程による2分類がはっきりし始めてきた印象が強い。ただ、上流工程といっても、これまでのような「ホワイトカラー」と「ブルーカラー」といった区分でいうところのホワイトカラーばかりを指すわけでもない。いわゆるブルーカラーと呼ばれる肉体労働系であっても、職人さんといわれている人たちの多くが創意工夫を凝らした仕事をしている点において、ただ毎日コツコツと同じ事務作業を繰り返しているホワイトカラーの人々より「上流」工程同様の価値を提供していることへの注目がなされるようになっている。
前者=境界線の曖昧化はともかく、後者については非常に面白い区分法がある。ジョージ・メイソン大学の社会政策学部教授Richard Florida氏の「クリエイティブ・クラス」という概念だ。Florida氏は、専門性の高い知識や複雑なコミュニケーションなどの技術を駆使し、非定型的な問題解決を行う職種に従事する人々をクリエイティブ・クラスと定義付け、彼らこそが社会における価値創造の中心であることを示した。
つい先頃、日本でも翻訳が出版されたばかりの「The Flight of the Creative Class: The New Global Competition for Talent(2005、邦題:クリエイティブ・クラスの世紀)」(2002年に大ベストセラーになった「The Rise of the Creative Class: And How It’s Transforming Work, Leisure Community and Everyday Life」の続編で、米国ではやはり大ベストセラーになった)では、Florida氏が提示したクリエイティブ・クラスの経済貢献度について異なる対象でさまざまな追加検証をし、同様の傾向が見られたことからその汎用的な性格が証明されたと紹介している。
Florida氏のクリエイティブ・クラスに先行して、2001年に英国のメディアコンサルタントであるJohn Howkins氏が発表し大きな話題になった「The Creative Economy」でもクリエイティブ・クラスに近い概念が提出されていた。ただし、そこでの議論の多くはいわゆる「クリエイティブ」な業種に集中しており、より広範な概念としてのクリエイティブ・クラスにまでは至っていなかった。
Florida氏のクリエイティブ・クラスの概念では、業種そのものではなく職種、あるいは同じ職種であってもそこでの仕事への取り組み方で、クリエイティブか否かを判断する。故に、同じ職場にあってもクリエイティブな働き方をしている場合とそうでない場合で、クリエイティブ・クラスへの分類で差すら生じる可能性がある。
また、Florida氏はクリエイティブ・クラスの多い価値創出力は、3つのT――「テクノロジー、タレント、トレランス(寛容性)」を揃えることで高まるという。テクノロジーとタレント(人材)はともかく、寛容性はあまりイメージしにくいかもしれない。ここでは「多様性」を受け入れることを寛容性と呼んでいるようだ。女性や同性愛者、マイノリティなどを受け入れる組織や都市が、よりクリエイティブ・クラスによる価値創造力に富むことになる。
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