米国で人気を集める仮想世界コミュニティサービス「Second Life」の日本上陸が間近だ。仮想世界の中にも現実同様の世界の構造を持ち込み、構造を二重化したことで、過去の3Dアバターサービスとは一線を引いているが、日本での展開はどのようなものになるだろうか。
かねてから、通信やメディア、ネットといった産業セクターを議論し、可能性を操作するための知的な道具を作りたいな、と考えていた。先日のハリウッドからの帰国便の中でアイデアがようやくまとまってきた。それは以下の4つの要素からなるものだ。
当たり前と言えば当たり前の4要素ではあるものの、思考のフレームワークとして一般性を持たせることが肝心であれば凡庸に見えるほうがむしろ望ましいとすら言える。もちろん、すべての場合がこの4要素をそれぞれ一個ずつ備える4つの事業体からなるわけでもなく、1要素が複数からなる(例えば、ユーザーが消費者と広告主となる場合など)もあるだろう。しかし、いずれにしても最小限の要素ですべての事例を語り尽くせることが肝心だ。
このモデルは前述のようにどんなものにでも適用できないと意味がないわけだが、適用する際に「二重化」を想定しないといけない場合がままある。そして、今後そういった事例が増える傾向にありそうだ。いや、正確に言えば、二重化しないと整理できないし、サービスが成立しないケースが少なからずある。例えば、一部のオンラインゲームやオンラインコミュニティといったサービスの内部ではもう1つの「世界」が構築されており、その世界で固有の産業セクターが生成されている。
一部のソーシャルネットワーキングサービス(SNS)でもツールやコンテンツを利用者間で取引する2次市場(例えば、新車市場に対して中古市場といったもの)的なものを内部に有する場合があるが、よりそういった入れ子型の二重化傾向がはっきりするのは、やはりMMORPG(Massively Multiplayer Online Role Playing Game:多人数同時参加型ロールプレイングゲーム)などのオンラインゲームだろう。そこでは、運営者が設定した、しないにかかわらず固有の通貨が設定され、その通貨の価値を元にその世界の内部でしか流通しない物品やサービスなどのさまざまな取引がなされることになる。
それらの取引される物品は、初期のMMORPGなどではゲーム運営者が用意しておいた武器やレアアイテムなどのグッズが中心だったが、やがてプレーヤー自身が内部世界で発明したり、育成したりしたモノが取引されるようになっている。そして、内部世界で流通する物品や貨幣と現実世界の貨幣との取引という越境交換が発生し、中央政策研究所の推定では日本国内だけでも150億円の市場規模すらあるという。「RMT(Real Money Trade)」と呼ばれるそれは、一部ではマネーロンダリングや詐欺、不正アクセス、あるいは現実には交換不可の通貨の為替取引に用いられるなど違法性を有するものとの関連が強いとされ、最近では日本国内でもいくつかの摘発があるほどだ。
以前からオンラインゲーム市場が活発な米国などでは、RMTが各種オンラインオークションサイト上でなされていた。運営者がその規模の急拡大を制御できないがために禁止するなどの行動に出た一方で、ソニー・オンライン・エンターテイメントが「エバークエストII」ではユーザー間のアイテム売買を公式化するなど、RMT自体を取り込む動きも生まれた。
もちろん、エバークエストIIのようなオンラインゲームの目的はゲームであり、終わりのないゲームの中でイベントを楽しむことがプレーヤー=ユーザーの行動となる。これに対し、オンラインゲームからゲーム性を後ろに隠し、内部での様々なビジネスの起業を前提とするなど内部通貨を有した完全なオンラインワールドのサービスの人気が高まっている。サンフランシスコをベースにしたリンデン・ラボが提供している「Second Life」だ。
そのサイトの表示によれば、すでに160万人を超える「住民」を抱える規模となったSecond Lifeが、日本上陸を予定しているという。まもなく日本語版ベータが開始される予定で、その紹介サイトも公開され始めた。CNETの本コラム担当編集者のようにマシンスペックが足りず参加できない!という方も今までは多かったに違いないが、今後Windows Vistaを対象としたマシンであれば問題なく楽しめるはずだろう。
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