10月24日からの携帯電話番号ポータビリティ制度(MNP)の開始を前に、ケータイキャリア3社の新端末が出揃った。この中には、スマートフォンや外国メーカー端末など、これまでの国産メーカー端末とは性格面で一線を画すものが増えてきている。
10月12日、携帯電話市場で55%のシェアを誇るNTTドコモがケータイキャリア3社の最後として新機種を発表した。FOMA 903iシリーズを中心に14機種のラインナップを明らかにすると同時に、12mmの「薄さ」を売り物にする詳細不明の端末をチラ見せするなど、先月28日に製品発表を行ったソフトバンクモバイル(10月1日にボーダフォンより社名を変更)に露骨に対抗したという印象を受ける。
加えて、最近は新規加入者数で先行するauに遅れをとっていたGPSの実装や150万曲定額聴き放題の「Napster」対応による音楽機能の強化など、端末の魅力づくりという面での対策もしっかり取っている。とはいえ、ワンセグモデルやHSDPA対応機種など特色のある端末の多くが年明け以降の発売であるなど、「ケータイ・ジャイアント」ドコモといえども、端末ラインナップをそろえるのにはかなり苦労していることがうかがえるものとなっている。
なにはともあれ、これまで体験したこともないイベント=MNP導入への対策として3キャリアが取った戦略は、新規投入端末の機種やカラーなど、バリエーションを豊富にそろえることだった。そして、それら多様な端末のうちの多くは、やはり、これでもかといわんばかりの多機能性を前面に押し出したものである。
ドコモの場合、これまでの国内ケータイ主要メーカー、例えばオリジナル4社(D:三菱電機、F:富士通、N:NEC、P:パナソニックモバイルコミュニケーションズ/松下電器産業)に加えて、最近人気の後発メーカー(SH:シャープ、SO:ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションなど)が依然として主力の90xシリーズなどではメインストリームではあるものの、70xシリーズなどではNokiaやSamsung Electronics、Motorolaなど海外メーカーの機種がだんだんと存在感を増しつつある。
京セラや東芝、カシオ計算機、三洋電機などを主軸においてきたauでは、その傾向がほとんど現れていない。しかし、ドコモ同様、W-CDMAを採用しているソフトバンクモバイルでは、むしろ積極的に海外メーカー端末を取り揃える傾向が以前からあった。実際、今回のラインナップでも「薄型」としてSamsungのケータイ(12.3mmの706SC)が大きくフィーチャーされているほどだ。ボーダフォン時代の末期には「いっそ端末は完全自由化(日本のキャリア特有のメーカーからの買い取りをやめて、欧米型の市場流通に任せたやり方にする)してしまっては」という一種破壊的な意見すらあったという。
とはいえ、海外メーカーの端末は、ドコモやソフトバンクモバイルが発売するHTC製のWindows Mobileを採用したスマートフォンを含めて、通常のiモードやYahoo!ケータイのサービス、あるいは通常のケータイメールが利用できない場合もあるし、画面表示でFlashなどのテクノロジーを採用していないもののほうが多いだろう。PCに接続した際のデータ通信は、使えたとしても通常のパケット料金割引の対象にはならないケースもしばしばだ。
そのため、海外メーカー製品は、日本のケータイ市場の中ではきわめて特殊な立場におかれることも多い。が、その半面で、海外では一般的なPCとの連携によるスケジュール情報の表示や同期、Microsoft Officeなどで作成されたファイルの閲覧など、「小さなPC」としての機能に優れるなどの利点も存在することは確かだ。それを活用したいがために通常の日本の標準的な携帯電話端末の機能やサービスを断念してもいいと考える層が幾ばくかは市場に存在し、それを無視できなくなりつつあることも事実であろう。
数で勝負、というレースが始まってしまった限り、かつ国内メーカーの多くがすでに疲弊し、これ以上の端末機種の多様化には対応しきれなくなりつつある現実をかんがみれば、何からの形で海外メーカーの製品をラインナップに加える必然性があることは明らかだ。そして、その際には、海外で一般的な機能をそのままに、国内の標準的な機能を省いた形で出荷を続けることは困難になっていくに違いない。
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