ソフトバンクの株価が一気に動意含みとなってきた。先週末の9月30日、同社株の1日の売買代金は1805億円と膨らみ、東証1部のダントツトップに踊り出た。株価は、一時前日比410円高の6810円まで買い進まれたものの、大引けは同100円安の6300円となるなど乱高下する展開だった。通信事業への傾斜を急ぐ同社の株価急動意の背景を探った。
同社の株価が出来高を伴って動きはじめたのは8月中旬。8月10日の第1四半期の決算発表席上で、孫正義社長が「おとくライン、光接続サービスともに、NTTとの回線接続ルールが改められない限り個人向けでは利益が出ない。無理はしない」と“利益重視”への転換を示唆する発言をし(関連記事)、市場では「第3世代携帯電話(3G)にフォーカスする事実上の方針転換」(外国証券アナリスト)と受け止められた。
個人向けブロードバンドの顧客獲得費が減少、3Gも日本テレコムのネットワーク活用とブロードバンドの固定客シフトで獲得費用を抑えるため、通期黒字浮上の公算もでできた。「ネット広告会社やポータルサイト企業への波及効果も大きい」(同アナリスト)との見方もある。なお、今3月期第1四半期の連結営業損益が31億9000万円の赤字(前年同期は38億1000万円の赤字)に縮小、6月単月は5億円と5年ぶりの黒字を計上した。
さらに、9月16日に日本経済新聞が「民放大手5社がソフトバンクに番組コンテンツを提供する方向で最終調整に入り、合意が得られ次第テレビ番組のインターネット配信に乗り出す」と報じたことも株価の刺激材料となった。ソフトバンクでは「コンテンツの拡充に関しては現時点で決まっていることは何もない」としているものの、近い将来にテレビ番組のインターネット配信が実現する可能性が高そうだ。
こうした、業績やファンダメンタルズ面に加えて、市場関係者のあいだでささやかれているのが、株式需給面での株価上昇要因だ。ソフトバンクは8月30日引け後、米大手機関投資家のキャピタル・リサーチ・アンド・マネージメント・カンパニーなどが4615万5200株(保有割合13.13%)を取得し、孫正義社長に次いで第2位の大株主に登場したと発表した。8月25日付で関東財務局に提出した大量保有報告書で判明したもの。
外国証券のアナリストは「ソフトバンクの外国人投資家の買い増しは、同社の業績面での成長シナリオがほぼ明確になりつつあるとの判断に基づくものだろう。もちろん、今後の買い増しも十分考えられる。また、デジタル家電関連などの主力ハイテクが、製品価格の低下による採算の悪化を理由に物色対象から外れている一方で、ソフトバンクを“内需ハイテク株”として見直す動きもありそうだ」と指摘している。
また、売買代金急増の背景には転換社債型新株予約権付社債(CB)の株式への転換加速が背景にあるとの指摘もある。同社では、それぞれ転換価格5484.2円、5952.9円、6493.5円の3本のCBを発行(各500億円)している。残存額は8月末の時点で未転換のまま。9月は株価が転換価格を上回ったため、急速に株式に転換されているもようだ。また、信用需給面でも信用倍率は1.36倍と荷もたれ感も少なく、今後の株価動向に一段と注目が集まりそうだ。
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