NECの株価が下げ止まらない。600円の大台を割り込んでからも下げ止まる気配をみせず、連日の年初来安値更新が続いている。ここにきて、ライバル企業である富士通にも株価で抜かれるなど深刻な事態となっている。同社の業績と株価の動向について探った。
NECの9月中間期連結決算(米国会計基準)は、売上高が前年同期比0.9%増の2兆3031億円、営業利益は同2.3%増の593億円、税引前利益は同7.6%減の718億円、純利益は同62.6%増の251億円となった。 なかでも営業利益は従来予想が640億円だったことを考えると、かなりの減額修正となったわけだ。
9月中間期の業績が振るわなかった背景には、携帯電話端末の不振、ITソリューション事業の伸び悩みがある。なかでも、携帯電話端末の不振は利益下方修正の主因となった。中間期の携帯電話端末の販売台数は600万台、売上高3095億円となった。これは、期初会社計画である前年同期並みの770万台、売上高3600億円という数字を大きく下回った。さらに、この事業の営業損益は100億円の赤字となり、前年同期の180億円の黒字から大きく悪化した。携帯電話端末事業の採算が悪化したのは、国内向けの2G出荷量が前年同期に比べて40%減と予想を大きく下回ったことに加え、部品調達の遅れなどで欧州向け3G端末の開発が遅れたことによる。期初に、前年同期比20%増の1850万台としていた年間の出荷予想台数は、同5%減の1470万台程度に下方修正された。
ITソリューション事業の中間期は、売上高が前年同期比1.4%増の9627億円、営業利益は同0.9%増の342億円となった。DVD機器市場の競争激化により、販売単価が下落し続けていることに加え、一般消費者向けパソコン市場の低迷が続いていることなどから、通期での営業利益を期初計画に対し100億円ほど下回ると予想している。
この9月中間決算に伴い、NECは2005年3月期の連結業績見通しを下方修正した。売上高は当初予想に比べ400億円減の4兆9000億円(前期比ほぼ横ばい)、営業利益は同700億円減の1500億円(同17.9%減)、税引前利益は同450億円減の1350億円(同15.9%減)、純利益は同100億円減の600億円(同46%増)としている。
こうした予想以上の業績下方修正について、外国証券のアナリストは「NECとしても、今後海外市場での携帯電話端末の競争力の回復を図る計画などを打ち出しているが、短期間での急回復は難しい状況にある。さらに、年初来高値(937円)をつけた4月26日から勘定して6カ月目に当たる信用取引の高値期日が通過したにもかかわらず、信用の買い残高がいっこうに減少する気配をみせていない。10月29日申し込み現在で買い残高4245万株、売り残高478万株と圧倒的に買い残高が上回っており、将来的な売り圧迫要因が依然として強く、これも株価反発への大きな阻害要因となっているようだ」としている。
NECといえば、日経平均株価が2003年4月にバブル崩壊後の最安値をつけた8000円割れ水準から急ピッチで全般大幅反発相場となったなかで、全体相場のけん引役を果たしていた。NECの株価自体も、330円台から一時は3倍を上回る1030円(2003年11月)まで上昇するなど大活躍した経緯がある。しかしその後の株価は、携帯電話端末の販売不振に加え、デジタル家電製品の需要失速や半導体市況下落への懸念、また外国人投資家のハイテク銘柄買い姿勢の変化などを背景に、今年の4月下旬以来一貫して下落トレンドを強いられている。
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