全般軟調相場のきっかけはフジテレビ?大規模ファイナンスの真相

 今週明けの13日、フジテレビジョンの株価が前週末比5万7000円安の47万8000円と急落した。同社の株価が50万円の大台を割り込んだのは8月11日以来のこと。昨年10月21日につけた昨年来高値の67万円からみると、30%近く下落したことになる。市場関係者からは「このフジテレビの急落が、3連休明け以降の相場全般の出端をくじかれるきっかけとなった」との見方も出ているほどだ。

 株価急落の直接の要因となったのは、先週末の9日に発表した公募増資などによる資金調達。18万株の公募増資と株式売り出し(ニッポン放送保有の6万株、および投資家の需要動向次第で追加的に売り出しを実施するオーバーアロットメントの2万株)により、最大1064億円の資金調達を実施すると発表した。これにより、最大20万株(公募増資の18万株とオーバーアロットメントの2万株)の新株が発行されることになり、現在の発行株済み株式数に対して18.6%の株式希薄化が生じることになる。したがって、将来の株式需給悪化や、1株利益の低下への警戒感から売りが殺到したわけだ。

 フジテレビは、大規模なエクイティファイナンスによって株価が急落することを当然想定して、3月31日現在の株主を対象に従来の株式1株を2株にする株式分割と、今期の配当を年2000円に増配することを同時に発表し、株主還元への姿勢をみせた。配当の従来予想は1200円、前期実績は開局45周年の250円記念配当を含めて1750円だ。しかし、同社のこのような動きも株価下落のショックアブソーバーにはならなかったようだ。

 調達する資金の使途については、親会社であるニッポン放送と共同で東京の臨海副都心に建設する新スタジオや、コンテンツなどへの投資に充てるとしている。しかし、この時期になぜ株価が大きく下落するリスクを冒してまでこれほど大規模なエクイティファイナンス実施に踏み切るのか、疑問を投げかける市場関係者も多い。外国証券のアナリストは「ファイナンスの理由がいまひとつ明確ではなく、必然性に欠けている。かねてから“歪み”との指摘を受けている筆頭株主ニッポン放送の出資比率引き下げも目的のひとつではないのか」としている。

 現在ニッポン放送は、フジテレビの発行済み株式数の32%を保有しているが、フジテレビ保有株の時価総額がニッポン放送の時価総額を上回るという歪んだ状況となっており、これが批判の対象ともなってきた。今回のファイナンスによって、ニッポン放送の持ち株比率は32%から20%台前半に低下することになる。

 また、フジテレビの株価上昇にとって懸念要因となるのが、業績の伸び悩み観測だ。今3月期は、映画「踊る大捜査線THE MOVIE II」や、イベント「キダム」など非放送事業による利益貢献により、2ケタの連結経常増益が見込まれている。しかし、来期に当たる2005年3月期の業績は、今期に比べて非放送事業での利益が大きく落ち込むことに加え、放送のデジタル化に伴う設備投資負担の増加などにより、経常減益となる懸念が広がっているのが現実だ。

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