半導体テスター専業大手のアドバンテストに市場関係者の注目が集まっている。昨年12月初めには7500円を割り込んでいた株価が、8700円水準にまで上昇してきているのだ。さらに、多くの市場関係者からは「近い将来に株価1万円を回復する可能性が高い」との見方が浮上している。その背景を探った。
アドバンテストの業績を大きく左右するのは、半導体自体の需要動向と、それに伴って大きく変動する半導体関連設備投資意欲の変化だ。現在同社にとって追い風となっているのは、カメラ付きなど付加価値の高い携帯電話の普及をはじめ、デジタルカメラ、DVDレコーダー、薄型テレビなどデジタル家電製品の世界的な普及を前に半導体の需要が拡大傾向を強めていることだろう。
アドバンテストはこれまで半導体不況の影響を受け、2002年3月期から2期連続で大幅赤字を計上、2年間で1440人の人員削減など大胆なリストラを断行した。ところが2003年9月中間期は、売上高が前年同期比51%増に急回復し、最終損益でも24億円の黒字(前年同期は37億円の赤字)に転換した。これはリストラ効果と、メモリー需要の回復に助けられた結果だ。
同社では、従来のメモリー向け偏重から脱するために、システムLSI(大規模集積回路)向けの統一規格の半導体試験装置「オープンスター」を提唱し、米Intelへの納入に成功している。このオープンスターは、接続方法やソフトウェア、データ処理方法に関連した規格を統一したもので、半導体の種類別に検査装置を新たに開発・変更する必要がなく、統一規格に準拠していればモジュールを組み換えるだけで済むというもの。利用者側の負担が軽減されるのが特徴だ。このオープンスターが来期以降の業績本格回復に寄与してくることになりそうだ。
さらに、需要環境の好転も同社の業績を後押ししている。昨年12月18日に国際半導体製造装置・材料協会(SEMI)が発表した北米地区の11月の半導体製造装置BBレシオ(受注対出荷比)が1.04倍と4カ月連続で改善したことに加え、昨年12月29日に業界団体の日本半導体製造装置協会が発表した11月の日本製半導体製造装置の受注額も、前年同月比2.7倍と急伸している。また、ドイツ証券が1月6日に世界半導体市場についての予想(ドルベース)を発表し、2003年は前年比17.8%増、2004年は9.1%増としている。パソコン、携帯電話の買い替え需要は2004年上期まで続き、アテネオリンピックや米大統領選挙なども控えているためファンダメンタルズは堅調であろうとしている。
準大手証券のアナリストはアドバンテストについて「受注の復調から、2004年3月期の業績は、経常損益145億円の黒字(前期は187億円弱の赤字)、最終損益90億円の黒字(同130億円弱の赤字)と大幅黒字転換の会社側予想だが、上方修正の可能性が濃厚となってきた」としている。
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