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どんなプロジェクトでも、初期の段階では、プロジェクトマネージャーがこれから取りかかろうとするプロジェクトを注意深く定義し、その計画を立てなく てはならない。そして、この作業を終えると出来上がるのが、 プロジェクト定義書だ(「プロジェクト憲章」という言い方をされることもある)。また、プロジェクトの計画立案のほうは、プロジェクト作業計画という 書類にまとめられる。この作業計画こそ重要なツールで、それがないとプロジェクトマネージャー自身も、そしてチームのメンバーも、プロジェクトを完了させるために何をする必要があるのかが判らなくなってしまう。さらに、いったん出来上がった作業計画でも、時々確認せずに放置しておいたら、当初の計画から逸脱してしまう恐れもある。そして、このことがプロジェクトの失敗を招くつまづきとなり得る。今回は、効果的に作業計画を管理し、よくある失敗の原因を回避するためのやり方について説明する。
警告の赤ランプ
いったん作業計画ができあがったら、今度はプロジェクトの規模に応じて、次の打つ手を考えよう。小規模プロジェクトの作業計画なら、それほど形式張ったものでなくても作れてしまう。反対に、大規模なプロジェクトの場合には、以前に手がけた同類のプロジェクトでつくった作業計画を元に、新しい作業計画を立てるか、あるいWBS(Work Breakdown Structure: 作業内容分解)テクニックを使って、まったくゼロから計画するのが普通だ。WBSは、手がけるプロジェクトをまず高度な視点から眺め、次にそれをより小さな断片にまで分解して、すべての作業の中身やその分量をすっかり把握できるようにするテクニックを指す。
このWBSまで済ませれば、それで作業計画はお仕舞いと考えてしまうプロジェクトマネージャーがなんと多いことか。だが、いったんつくった作業計画をその後も更新することを忘れてはならない。もしそれを怠ると、プロジェクト全体の成否に関わることになりかねないからだ。次にあげるのは、そんな、更新がおろそかになっていることを示す具体的なサインだ。
要するに、プロジェクトマネージャーが作業計画をつくりながら、しかしその時点までの進捗状況をよく理解しておらず、また今後更にどれくらいの作業が残っているかを把握していない場合には、そのプロジェクトがトラブルに陥っているということである。こうした事態が発生すると、最も重要な作業に対し てプロジェクトチームのリソースを効率よく使うことができない。そして、ついには、チームのメンバーが納品間際になって、実はもっとやらなくてはならない作業が残っていることに気付くといったことになる。また、もっと手前の段階で仕上げておくべきことが終わっておらず、この時になって作業のやり直しをしなくてはならない箇所があることを発見するかもしれない。
作業計画を管理する上での、その他のよくあるミス
作業計画を管理していくにあたってよく起こる問題には事欠かないが、そのなかには次のような事柄も含まれる。
プロジェクトマネージャーが、作業計画を更新することはするが、ただしその間隔が空きすぎる--たとえば全体で6カ月かかるプロジェクトで、2カ月毎 にしか更新しない、といったことが時々ある。この場合の問題は、いざ正式に計画を更新しようという時には、すでにいくつかの作業の漏れがでているかもしれないということだ。それに加えて、スケジュールを超過していたり、予算をオーバーしており、さらにそれに気付くのに時間が掛かりすぎた場合は、すっかり手遅れになっていて、もはや遅れを取り戻したり、超過を吸収したりできない状態になっているかもしれない。
どの作業にも本来なら締切があるはずだ。作業が時間通りに終了していれば、問題はどこにもない。いっぽう、作業が締切までに完了していない場合には、「何パーセントまで作業が進んでいるか」と尋ねることが多い。けれど、この質問に返ってくる答えは、とても主観的なものだ。だから、もっといいのは、単純に「いつまでにその作業が終わるか」と尋ねること。プロジェクトがトラブルに陥っていないかを見極める際には、この質問で得られる答えが役に立つだろう。
一週間の終わりまでに終わる作業をチームメンバーの誰かに割り当てれば、その週の終わりには作業が順調に進んだかどうかがわかる。けれども、四週間後まで終わりにする必要のない作業となると、万一遅れが生じても、随分後になるまでその遅れに気付けなくなる。たしかに、作業を割り当てられたメンバーは「25パーセントまで終わった」とか「50パーセント完了」と答えはするだろう。だが、これはとても主観的な答えである。
プロジェクトが予定通りに進んでいるかが確実にわかるのは、実際に四週間で作業が終わった、その時だけだ。そして、これだと随分長い間進捗度のはっきりしない期間が続いてしまう。一般的には、大規模なプロジェクトの場合、作業の単位を二週間かそれ以下になるようにすること。また小規模なものであれば、一週間のほうがいいかもしれない。こうしておけば、万一スケジュールに遅れるようなことがあっても、すぐにそうと判る。
プロジェクトを軌道に戻すには?
できることなら、作業計画が使い物にならないほど古くなり、そしてプロジェクトの進捗がどうなっているのかを正確につかんでいないというような状況には陥りたくない。だが、現実にそんな状態になってしまったら、その時まずやるべきことは、一歩後ろに下がって、作業計画を改めて更新してみることだ。そのためには次のようなことをする必要がある。
作業計画を更新する必要に気付いた時には、すでにプロジェクトが困難な状態に陥っていたということもよくある。その時点で作業計画を更新しても、自分たちがどれほど困った立場に置かれているかを思い知らされるだけだ。それならば、定期的に更新しておくほうが、少々面倒でもずっといい。毎週更新ならベストだが、大規模なプロジェクトではおそらく隔週ごとの更新でも問題ないはずだ。
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