本連載の7回目の記事(「知的財産推進計画」のススメ)では、レベルの高いユーザーが大量に存在することが日本の強みではないか、と提起いたしました。層の厚いハイレベルユーザーの存在が日本の強みであるということ自体は、さまざまな文脈で頻繁に言及されているようです。
しかし、実例を挙げて説明しようとすると、動画共有サイトやコミケ、ワンフェスなどが例としてすぐに思い浮かぶものの、それらはかなりニッチな領域のようにも思われますし、どうもそれだけでは説明力(一般性)に乏しいような気がします。
これを説明する良い事例がないかと探しておりましたところ、先日、私が主催する講義「コンテンツ産業論」で講師としてお招きしたアパレルウェブ所属コンサルタントの山中健(やまなか たける)さんの講義の中でファストファッションが日本で受容されつつある理由として、ハイレベルユーザー層の存在が取り上げられ、事例として興味深いと感じました(受講した学生によるレポートはこちら)。
そこで、今回の記事では、山中さんの講義を題材として、ハイレベルユーザー層の存在について触れ、さらには日本におけるファストファッションの受容の在り方について、講義を再現しながら考えてみたいと思います。
山中さんによる講義のタイトルは「欧米型ファストファッションと日本マーケット」というものでした。講義の中では、日本のファッション市場の特徴に始まり、ファストファッションの仕組みの従来型アパレルとの違いについて触れられ、最後にファストファッションの日本での受容のされ方についての説明というように進んでいきました。
最初に、日本のファッションマーケットの特徴についてご説明されましたので、その説明から聴いてみましょう。
最初は海外にいくと、「海外って変わっているな」、と思っていましたが、次第に「日本が変わっているんだ」ということがわかってきました。
日本のファッションマーケットの構成をみてみますと、「上・中・下」がちゃんとあります。これが大きな特徴なのです。他の国では、ファッションにすごく興味がある人と、どうでもいいと思っている人とに二極化されています。
たとえば、ニューヨークに行ったとしましょう。そこそこの値段でおしゃれで日本に入ってきていないブランドを探そうとしても、なかなか見つかりません。あるのは、GAPやH&MやOld NAVYなどのようなSPAと呼ばれる価格訴求型の業態、もしくはルイヴィトンやクリスチャンディオールといったハイエンドと呼ばれているような非常に高価なインターナショナルブランドの2種類に分けられます。
なるほど、ファッションブランド自体がアメリカでは二極化しているのに対して、日本では幅広いブランドが揃っているわけですね。ここでのファッションの多様性については、講義の中ではアパレルウェブが作成したファッション雑誌のカテゴリマップを用いてご説明されました。その一部は経産省のウェブサイトに掲載されている資料(PDF)の22ページで見ることができます。ファッション雑誌はそれぞれ細分化されたファッションカテゴリを代表しているわけですね。その数が多い上に、高価格帯から低価格帯まで満遍なくカバーしていることはマーケットの構造を反映しているのではないでしょうか。
さて、最近、日本上陸が相次いだファストファッションですが、それらが他のアパレルと異なる点はどこなのでしょうか。
重要なポイントは3つあると説明されました。
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