NTT東がスマートホームは2024年こそ「本格普及」と意気込む理由--Wi-Fi新規格でつながりやすく

 テクノロジーを活用して、ビジネスを加速させているプロジェクトや企業の新規事業にフォーカスを当て、ビジネスに役立つ情報をお届けする音声情報番組「BTW(Business Transformation Wave)RADIO」。スペックホルダー 代表取締役社長である大野泰敬氏をパーソナリティに迎え、CNET Japan編集部の加納恵とともに、最新ビジネステクノロジーで課題解決に取り組む企業、人、サービスを紹介する。

 ここでは、音声番組でお話いただいた一部を記事としてお届けする。今回ゲストとしてご登場いただいたのは、東日本電信電話 ビジネス開発本部無線&ioTビジネス部5G/IoT企画担当担当課長の小島量氏。共通規格「Matter」の登場で、いよいよ本格普及が期待されるスマートホームに取り組むNTTの位置付けについて聞いた。

  1. 在庫確認も不要になるスマートホームの第2段階
  2. つながらない、途切れる不安を解消する「Wi-Fi HaLow」とは
  3. 家電メーカー、不動産会社などとの共創の場「スマートホームラボ」とは
東日本電信電話 ビジネス開発本部無線&ioTビジネス部5G/IoT企画担当担当課長の小島量氏
東日本電信電話 ビジネス開発本部無線&ioTビジネス部5G/IoT企画担当担当課長の小島量氏

在庫確認も不要になるスマートホームの第2段階

加納::小島さんが所属するビジネス開発本部無線&ioTビジネス部とはどんなお仕事をされているのですか。

小島氏:NTT東日本グループが取り扱うサービスやプロダクトの商品開発を手掛ける部署になっています。その中で私が所属する無線&ioTビジネス部は、Wi-Fiはもちろん、ローカル5Gや今注目を集めつつある802.11ah規格「Wi-Fi HaLow」(ワイファイヘイロー)も含め、無線関連サービスを横断的に扱っています。

大野氏::その中でもスマートホーム事業というのはいつごろから手掛けられているのですか。

小島氏:2011年がスタート時期にあたります。東日本大震災が起こり、日本は全国的に電力が逼迫しました。その中で、家庭の電力を見える化するサービス「Home Energy Management System(HEMS)」が注目され、その拡充機能としてスマートホーム的なサービスも開始しました。

大野氏::現在、スマートホームはどういったことができるようになってきているのですか。

小島氏:一番はその家に住んでいる人の利便性を向上できます。エアコンや照明が自動的にオンオフできたり、カーテンを開閉したりというのが代表的な効果になります。最近は、さらに一歩、二歩進めて、家事代行などの外部サービスと連携といった分野も視野に入ってきています。その次には建物の管理といったビジネス領域もスマートホームの範疇として、非常に可能性があると考えています。

大野氏::今、非常にいいヒントとなる「家の中の生活が変わる」というキーワードがありました。このあたりはどのように変えようとしているのですか。

小島氏:現在、共働きが進み、家事にあてる時間が少なくなっているという課題があります。同時に高齢化が進み、体力的に一人でこなせない家事が増えている。この課題を克服し、より便利な生活を提供するために、スマートホームは大きな可能性を秘めている分野だと思っています。

加納::家事代行サービスをお願いしたり、ロボット掃除機が掃除をしてくれたり、カーテンを開閉する手間がなくなったりと、家事の負担が少なくなるというイメージですか。

小島氏:2段階あると思っていて、ロボット掃除機などのようにデバイスを導入することで、家事を自動化するのが1段階目。2段階目は家事代行サービスをより便利に使うイメージです。例えば買い物代行をお願いしたくても、家の中の食料や消耗品の在庫を確認して、リストアップして、お願いするという一連の作業が必要ですよね。

 そうした一連の作業も家庭内のセンサーなどを活用して、担えたらと思っています。家族の好き嫌いやアレルギーの有無などの情報もスマートホームの中で収集することで、何も言わずとも、買い物や調理が家族にフィットした形で提供してもらえる。そういう可能性があります。

大野氏::情報を収集して買い物や調理を自動化する、こうしたサービスを私も考えたことがあります。しかし、スマートホームは規格が企業間で異なったり、新規格が出ては消えするのを繰り返しているので、実現しにくいような気がします。2024年は今までとは違う兆しが見えてきているのでしょうか。

小島氏:まさにその兆しが出てきたと思っています。2022年10月に米国の無線通信規格標準化団体「Connectivity Standards Alliance(CSA)」が、「Matter」(マター)という標準規格を制定しました。これがまさに事実上のデファクトスタンダードになると考えています。

 今までは規格が異なり、市場が分断されていました。Matterの登場により、一気に市場統一に進む方向になってきた。今こそ参入するチャンスなのではないかと各社が取り組みを開始しています。

つながらない、途切れる不安を解消する「Wi-Fi HaLow」とは

大野氏::今までは、スマートフォンやスマートリモコンなどを使っても、特定の製品しか操作できなかったり、プラットフォーム内でしか使えなかったものが、Matterで使えるようになるのですね。

加納::日本はガラパゴス的な進化を遂げてしまうケースもあると思うのですが、Matterに関しては心配なさそうですか。

小島氏:そうですね。日本はすでに独自の規格を作っていますが、広く普及しているとはいいがたい状況にあり、家電メーカーなどもスマートホーム分野に慎重になっているところがあると思います。そうした背景からも、各社はMatterというデファクトに乗るタイミングかなと思っています。

大野氏::Matterの登場によって、スマートホーム市場が変わろうとしているのですね。ただ、スマートホームのサービス内容についても課題があるのではないでしょうか。

小島氏:一番の課題は、今まで普及してこなかった原因とも言えるのですが、スマートホームが提供する便利さが、なかなか数字や金額に換算しがたいからだと思います。結果として、ビジネスを水平に広げていくような吸引力が弱く、一部の人が使うだけにとどまっている。これを克服することが最大の課題となっており、乗り越えた先に、サービスを提供する上での課題みたいなものがようやく見えてくるような気がします。

大野氏:私自身が考える課題は、複数の部屋にまたがって機器を使用すると、通信が途切れてしまう、不安定になってしまう部分だと思っているのですが。

小島氏:スマートホームでよく用いられる通信は2.4GHz帯で、電子レンジなどと同じ周波数帯です。そのため干渉して通信が途切れてしまうこともよくありますし、壁などで遮られてしまいがちです。この課題を解決するために、一般的な無線LANとは異なる無線規格をスマートホームに活用するというアプローチが有効ではないかと考えています。それがWi-Fi HaLowです。これを使うと壁なども回り込んで隣の部屋でもスムーズに通信ができますし、電子レンジなどとも混線しない。このWi-Fi HaLowをプッシュしていくことで、通信部分の不安定さは解消されると考えています。

家電メーカー、不動産会社などとの共創の場「スマートホームラボ」とは

大野氏:実際にスマートホームを体験できるような場所も用意されているということですが。

小島氏:東京都調布市に「スマートホームラボ」を開設しました。スマートホーム分野に関心のある事業者へMatterやNTTが持つアセット、技術を活用したビジネス展開や支援をするきっかけとなるフィールドになります。

 建物を建てる住宅メーカ、ディベロッパー、それを管理する管理会社、住宅設備やIoTデバイス、家電メーカー、スマートホームを提供する事業者の方に加え、家事代行や介護事業者等の住宅に関連するサービスを提供する事業者の方にもご利用いただいています。

スマートホームの共創フィールド「スマートホームラボ」
スマートホームの共創フィールド「スマートホームラボ」

 下記の内容を中心に、音声情報番組「BTW(Business Transformation Wave)RADIO」で、以下のお話の続きを配信しています。ぜひ音声にてお聞きください。

  • 「2024年こそ本格普及へ」を後押しする不動産業界との連携
  • NTT東が見据えるスマートホーム活用したマンション、ビル管理の未来






大野泰敬氏


スペックホルダー 代表取締役社長
朝日インタラクティブ 戦略アドバイザー


事業家兼投資家。ソフトバンクで新規事業などを担当した後、CCCで新規事業に従事。2008年にソフトバンクに復帰し、当時日本初上陸のiPhoneのマーケティングを担当。独立後は、企業の事業戦略、戦術策定、M&A、資金調達などを手がけ、大手企業14社をサポート。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会ITアドバイザー、農林水産省農林水産研究所客員研究員のほか、省庁、自治体などの外部コンサルタントとしても活躍する。著書は「ひとり会社で6億稼ぐ仕事術」「予算獲得率100%の企画のプロが教える必ず通る資料作成」など。



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