スマートフォンネイティブが見ている世界

メールの知識・経験がない学生たち--メアドは未所有、インターン・就活まで不要?

 先日、中学2年生の息子にメールの話をしたところ、「メールって何?」と言われてしまった。驚いて、「見たことあるはずだよ」とPCでメールを見せたところ、「これか。前、見せてもらったことある」という反応だった。「e-mailだよ。electronic mail、つまり電子の手紙ってこと」と伝えると、「そのままだね」と感心していた。

 確かにまだ自分のスマートフォンも持っていないし、メールアドレスも持っていないから、当然利用したこともない。「LINE」なら毎日利用しているが、それにしてもメールがわからないとは思わず驚いた。学校でもSNSについての授業はあるけれど、メールは特に取り上げないし、学校の授業内でもコメントを書き込むコミュニケーションしかしていない。

 若者の間ではメールがより一層使われなくなってきている。若者におけるメール利用実態についてお伝えしていきたい。

  1. 小中高校生はメールアドレスを利用しない
  2. 大学生もメールは「あまり使わない」
  3. 「メールにはルールがある」ことを覚えておこう

小中高校生はメールアドレスを利用しない

 女子小中高校生の保護者を対象としたフリューの「子供のスマートフォン事情」(2020年9月)によると、メールアドレスの所有状況、利用状況について聞いたところ、小学1〜3年生で50%、4〜6年生で41%という結果に。メールアドレスを利用しているのは、わずか17%となった。

 中学生と高校生は、学年が進むに連れ「メールアドレスを使用している」割合が増えてくる。ただし、「所有・かつ使用」している割合が50%を超えるのは高校1年生以上だ。登録にメールアドレスが必要なサービスもあるため、登録用などで所有してはいるものの、実際はほとんど利用していないというわけだ。

 息子の場合はスマホがない上、メールを使う用事もないため、アドレスも作成していない。登録などで必要な場合も、筆者のメールアドレスで登録してしまっている。同様の家庭も多いのではないだろうか。

大学生もメールは「あまり使わない」

 中学生がメールについてわからないのは、それほどおかしな話ではない。しかし、実は大学生でもメールアドレスこそあり利用もできるが、あまり利用していない。

 大学構内でのレポート提出なども、授業支援システム経由で提出する仕組みであり、少なくともほとんどの講義ではメールを使わない。筆者も学生向けに校内のメールアドレスを公開しているが、学生からメールがくるのは欠席連絡や遅刻の連絡などのみ。学生とは数えるほどしかメールのやり取りをしたことがない。

 学生同士も、普段のやり取りではLINEや「Instagram」のDM、「Twitter」のDMなどを使うという。「Discord」を利用する大学生もいるが、メールを利用する機会は本当に少ないのだ。

 東京工科大学の新入生の「コミュニケーションツール」利用実態調査(2023年5月)によると、普段、家族や友人との連絡に使っているものは、「LINEメッセージ」が98.4%で最多。続いて「InstagramのDM」が48.9%などとなっている。「携帯電話/スマートフォンのキャリアメール」は、2014年には71.4%とLINEメッセージに次ぐ利用率だったが、徐々に減っており、2023年は14.4%まで減少している。

「メールにはルールがある」ことを覚えておこう

 大学の講義内で、SNSとメールのコミュニケーションや作法の違いを説明したことがある。ところが、SNSとの比較のために出した「メール」に対する学生の反応が限りなく薄い。「あー、先生に送ったりとか、ねえ…」などと言いながら、お互いに顔を見合わせている。

 どうやら、大学生なのでメールアドレスもあるし、使ったこともある。しかしどうやらほぼ使っていないため、メールの経験がほとんどないらしい。だから、「メールとはこういうもの」という話さえぴんとこないようなのだ。

 とうとうそこまで使わなくなっているのかと思いながら、「あまりメールは使わない?」と聞いたところ、「ないですねえ…」という。インターンや就活では使うだろうが、その前にはほとんど利用する機会がないのだ。

 LINEが普及し、連絡先として電話番号やメールアドレスの交換をしなくなり、SNSでのみつながる人が増えた。SNSでのやり取りは挨拶もなくいきなり用件に入ることも多い。しかし、仕事ではやはりメールでのやり取りが依然、多数派だ。会社の名前を背負ってクライアントなどとやり取りする以上、「メールのルールを知らなかった」では済まないことになる。

 過去にある学生から、件名や宛名などをいい加減にしたメールでインターンの申し込みをして断られたと聞いた。メールの経験がほぼないため、ルールや作法を知らなかったためだ。「友だちじゃないのに、宛名もない『今日休みます』だけのメールを学生に送ってこられる」という大学教員の愚痴もきいたことがある。

 メールはいずれ使わねばならないものだが、多くの若者たちはほとんど知識がない可能性が高い。ルールを身につけるのが一番だが、利用する機会自体が乏しいので現実的ではないかもしれない。せめてルールがあることを覚えておき、必要なときに調べながら作成するといいのではないだろうか。無用なトラブルを減らすために、周囲の大人も協力してあげていただけると幸いだ。

高橋暁子

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。

公式サイト:https://www.akiakatsuki.com/

Twitter:@akiakatsuki

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