5Gネットワークは確かに拡張しつつある。高画質の動画、ラグのないゲーム、さらには無線ベースの家庭用インターネットなども始まっている。だが、それも5Gが持つ可能性の、ほんの一面にすぎない。5Gのより壮大な構想では、例えばコネクテッドカーが衝突を避けるためにミリ秒単位で互いに警告を発するとか、しゃれた拡張現実(AR)グラスが、センサー完備で、接続が完璧なスマートシティの中を案内してくれるとか、そういった未来まで約束している。
残念ながら、そうしたいわゆるキラーアプリはまだ開発途上だ。約束された未来が実現するには、5Gネットワークがもっと発展して、信頼性の高い高速接続が可能にならなければならない。しかし、まだそこまで達していない。
「信頼性の高い高速接続と、今より多くのユーザーに同時に対応できるキャパシティーを同時に実現するというのは、全く違う状況だ」。こう語るのは、市場調査会社IDCでコネクティビティーとスマートフォン半導体を担当しているリサーチディレクターのPhil Solis氏だ。
5Gと、こうした高性能ネットワークで最終的に実現できる世界とに伴うジレンマが、ここに存在する。企業は、性能の高い無線ネットワークを基盤として利用しながら、テクノロジーのさまざまな局面での飛躍的な革新をうたい続ければいいだろう。だが、そのネットワークが実際に大幅な進展を見せるまで、そのうたい文句の大半は空論、あるいは限定的な実験の域を出ないということだ。
幸いなのは、キャリア各社がこれに本腰を入れていることだ。ミリメートル波、つまりミリ波(mmWave)なら、間違いなく最速の5G速度を達成できるが、カバーできるエリアが5Gの他のタイプより狭いため、特定の都市の一部やイベントスペースでしか使われていない。ローバンド5Gは、米国では現在の4G LTEネットワークより若干速い程度だが、エリアが広いので郊外や地方のユーザーまでカバーできる。最も有望そうなのがミッドバンド5Gで、高速を実現できるうえに、広域にわたって同時に多くの人がネットワークにアクセスできる。
世界全体を見ると、ネットワークのほとんどはミッドバンド5Gで構築されているが、米国のキャリアはこの3種を混合で提供している。T-Mobileの5Gネットワークは大部分がミッドバンド5Gで、これは2.5GHzの周波数で動作する。一方、VerizonとAT&TはCバンドをはじめとする他のミッドバンド5Gサービスを2022年から稼働している。
こうしたネットワークの発展と、ユーザーがサーバーにアクセスしやすくなるインターネットプロバイダーやクラウドコンピューティング企業による機能強化によって、5Gは私たちの生活を大きく変える可能性がある。ちょっと想像しただけでも、エンターテインメントを楽しむ、他者とつながる、世界中を移動するといったあり方が変わってきそうだ。おそらく、5Gの最善の使い方が見つかるのは、高速ネットワークによって都市部から郊外、さらに地方にまで信頼性の高い高速サービスが浸透してからになるだろう。
スマートフォンの5G接続は2019年に始まっており、ネットワークの改善に伴って、高速接続によって動画ストリーミングとゲーミングの水準が上がった。デバイスを超え、5Gのコネクティビティーは家庭と路上に拡張する。
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