社会活動の再開以降、遠出して仮想現実(VR)の冒険に挑戦する機会が無かったわけではない。しかし、「THE INFINITE」は、最も壮大な体験だった。
THE INFINITE は、国際宇宙ステーション(ISS)の実物大の仮想レプリカを探索できる大規模な施設であり、この種の体験型VR施設としては最大規模のものだ。新型コロナウイルスが猛威を振るい、世界全体が恐る恐る社会活動を再開しているが、同施設もヘッドセット用の紫外線消毒ステーションを完備している。装着前に除菌することが可能だ。
映画館が壊滅的な打撃を受ける一方で「Netflix」が好調だったように、パンデミックによって、仮想現実の運命は二極化した。リビングルームでは盛り上がりを見せたVRだったが、ロックダウンとソーシャルディスタンスによって、ロケーションベースVR(体験型VR施設)は大きな打撃を受けた。
それでも、すでに2つの都市を巡回し、2022年中にさらに3つの都市でオープンする予定のTHE INFINITEの最近の成功は、例外的なものではない。体験型VR事業を手がけるほかの企業の活動状況もパンデミック前の水準に近づいており、時には上回ることもあると報告している。体験型VR施設は、メタバースの刺激的な宣伝文句を聞いた際に真っ先に思い浮かべる場所ではないかもしれない。しかし、メタバースを実際に体感してみたいのであれば、ロケーションベースVRは最初に行くべき場所の1つだ。
メタバース(現在と未来のメタバースがどんなものであれ)は、いくつかのテクノロジーが集まる場所であり、VRはその中で重要な役割を果たす。メタバースは現在大きな話題になっているが、それをあおっているのが最も人気の高いVRヘッドセット「Oculus」を手掛けるMetaであることは、偶然ではない。「レディ・プレイヤー1」のようなSF作品がVRに触れる機会を提供しているおかげで、VRは、多くの平均的な人々にとって、メタバースの未来の完成形を想像するときの基本的な要素の1つとなっている。
「レディ・プレイヤー1」に出てくる架空の「触覚フィードバックスーツ」に近いものを実際に装着して、仮想現実で物理的な感覚を再現することは、すでに可能である。「全方向性トレッドミル」のようなものの上で走れば、現実世界で1カ所にとどまりながら、仮想世界で無限に移動することもできる。
しかし、そうしたテクノロジーは、途方もない大金をつぎ込みでもしない限り、自宅で体験することはできない。その代わりに、ロケーションベースVRという選択肢が提供されている。
ポッドキャスト「Voices of VR」のホストであるKent Bye氏は筆者に対し、「それは実現可能な最先端の体験だ」と語った。「ロケーションベースのエンターテインメントは常に限界に挑戦している」
ロケーションベースVRには限界テストの性質があるため、その体験は千差万別だ。THE INFINITEはその一例にすぎない。ロケーションベースVRは、Dreamscapeなどが運営するハイエンドのVR「シアター」形式や、対戦ルーム(レーザー銃で戦うサバイバルゲームのVR版)の形式をとることもできる。それらの対極に位置するのは、ゲームセンターでほかのゲームの音が流れる中でプレイするようなVRゲームだ。
しかし、テーマパークの「乗り物」であれ、サンダンス映画祭で展示された精巧な没入型アートであれ、ロケーションベースVRは自宅以外の場所で体験する仮想現実だ。ユーザーはそこに足を運んで、ほかの人々と一緒に、その特定の冒険シミュレーション用にカスタマイズされたハードウェアやその他の機材を使用する。
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