生産者と消費者をつなぐ産直アプリ「ポケットマルシェ」を運営するポケットマルシェは3月8日、「地域」や「地球」の課題解決に向けて挑戦する生産者を表彰する「ポケマルチャレンジャーアワード2021 〜課題に立ち向かう生産者たち〜」の受賞者を発表した。
同アワードは、地域や一次産業あるいは、地球に存在する課題の解決に挑戦する生産者に対して、取り組みのインパクトやユニークさを踏まえて表彰するもの。「自由テーマ」と「年度テーマ」の2部門それぞれで、最優秀賞1名、優秀賞2名、特別賞2名を選定している。
審査項目は、(1)解決しようとしている課題の深刻さ、(2)取り組みがもたらすポジティブなインパクトの大きさ、(3)取り組みのユニークさ、(4)取り組みによって実現したいビジョンの明確さの4つ。
なお、自由テーマ部門では、地域や一次産業を取り巻く課題の解決に挑戦する生産者を選定。年度テーマ部門では、今回「一次産業の現場から、地球を持続可能に」をテーマに、気候変動や生物多様性の減少など、地球の持続可能性を脅かす課題の解決に挑戦する生産者を選定している。
初開催となる今回は、約6600名の「ポケットマルシェ」登録生産者を対象に、2月2日から2月13日の期間でエントリーを受け付け、9都府県から10名の生産者が受賞している。
同社は、社会の持続可能性を脅かす「都市と地方の分断」の解消を目指し、生産者と消費者を直接つなぐ産直アプリ「ポケットマルシェ」を2016年9月より運営。現在約6600名の生産者が登録しており、生産現場のリアルな情報が日々集まっているという。
そのような中で、「生産者が直面する課題」や「課題解決に向けた生産者の挑戦」は、まだ世の中において広くは知られていないという。それらを伝えていくことで、消費者が課題への理解をより深め、解決に向けた動きに自分の事として関わるきっかけを生み出したいという考えから、同アワードを開催した。
加えて、SDGsの達成に関心が強まる中で、地球が抱える課題を意識した生産者の取り組みを応援すべく、2021年の年度テーマを「一次産業の現場から、地球を持続可能に」としている。
自由テーマ部門で最優秀賞に選ばれたのは、Hennery Farm(千葉県銚子市)の坂尾英彦さん。「農業のマイナスなイメージを変え、次世代に誇れる産業にしたい」という思いから、消費者とともに「農業のエンタメ化」に取り組んでおり、ブランド野菜「アフロきゃべつ」「アフロコーン」を販売する。また、アフロのカツラを被って行う農業体験、畑でのヨガ、古民家での農泊、規格外野菜の商品化など多数の取り組みを推進。さらに、地元企業とのコラボ商品販売、地元行政のワーケーション事業への参画など地域を巻き込んだ活動も行っている。
優秀賞は、小型底引き漁船「健勝丸」(和歌山県和歌山市)の池田佳祐さんと、エガワコントラクター(福島県喜多方市)の江川正道さんが選定された。
健勝丸では、空き家を活用した漁家民泊施設「Fisherman’s Table & Stay 新七屋」を2021年8月に開設しており、新型コロナウイルス終息後には、国内外から年間100組以上の宿泊者の受け入れを目標としている。
エガワコントラクターでは、「人が離れて荒れた農地だからこそ、人が集まって発展させていく農地」をコンセプトに、農業景観の維持・鳥獣被害の低減・農の多面的機能の維持を図る目的で、地域に点在する耕作放棄地を農地へ再生。その農地で野菜の栽培と農作業体験を実施している。
特別賞は、Heartich Farm ハーティッチファーム(栃木県真岡市)の賀川元史さんと、うみのもり(鳥取県岩美郡岩美町)の則定希さんが選定された。
Heartich Farm ハーティッチファームでは、都会の消費者にナスの苗を自宅で約1カ月間育ててもらった後、苗を預かり生育過程を報告しながら農園で育て、収穫後にはそのナスを食べてもらう「ナスの苗里親プログラム」を展開している。
うみのもりでは、地域の活性化・漁業の発展を応援することを目的に、鳥取の板ワカメの魅力をさまざまな角度から発信する「ワカメ部」活動を行っている。これまでに、6畳の大きさの「世界最大の板ワカメ」づくり、ワカメアクセサリーやワカメソングの制作、ワカメ落語などを展開する。
年度テーマの最優秀賞には、鴨志田農園(東京都三鷹市)の鴨志田純さんが選ばれた。生ごみ問題の解決を目指し、各家庭の生ごみを農場で堆肥化して野菜を栽培し食卓へ届ける「サーキュラーエコノミー型CSA」を展開。2021年は37世帯が参加し、約4000Lの助燃剤削減に寄与しているという。
今後は、150世帯まで規模を広げ、地域循環共生圏の好例にしたい考え。また、公共コンポストの設置促進、堆肥技術者養成プログラムの実施、学校などでの環境教育活動なども行っている。
優秀賞には、小松台農園(大分県由布市)の竹林諭一さんと、RE-SOCIAL やまとある工房(京都府相楽郡笠置町)の笠井大輝さんが選ばれた。
小松台農園では、県内の貝養殖業で廃棄される貝殻を肥料化し、有機農業に活用することで、「近海の富栄養化」の一因となっている「貝殻の廃棄」と「農地からの肥料分流出」という2つの課題に取り組んでいる。今後は、循環資材を活用した生産物を「豊の環」(とよのわ)という名称でブランド化する予定。
RE-SOCIAL やまとある工房では、ジビエ消費の促進により、獣害の抑制、地域の雇用の創出、生態系の保全、二酸化炭素排出抑制を目指している。狩猟・処理・販売までを一貫して行うことで、冷凍保存が主流のジビエ業界では初の「生ジビエ」を販売している。
特別賞には、西村養蜂場(和歌山県海南市)の西村洸介さんと、アグレス(長野県南佐久郡南牧村)の山浦昌浩さんが選定された。
西村養蜂場では、採蜜した純粋蜂蜜の販売と、花粉交配や種蜂の販売を行っている。近年は温暖化による猛暑で採蜜量が減少。ミツバチの飼育が難しくなってきていることから、ミツバチと共に飼育場所を移動して養蜂をする「移動養蜂」を開始。2021年6月末から300群のミツバチと北海道へ移動し、150群の増群に成功した。
アグレスでは、規格外であることなどが理由で収穫・出荷の途中で廃棄されていたほうれん草を加工し、「野辺山ほうれん草カレーペースト」を製造・販売している。今後、新商品の開発も予定するという。
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