パナソニックは、2021年度第3四半期累計(2021年4~12月)連結業績を発表した。売上高は前年同期比11.3%増の5兆4233億円、営業利益は20.9%増の2741億円、調整後営業利益は23.9%増の2873億円、税引前利益は26.9%増の2793億円、当期純利益は50.3%増の1956億円となった。
また、第3四半期(2021年10~12月)連結業績は、売上高は前年同期比4.2%増の1兆8898億円、営業利益は43.9%減の730億円、調整後営業利益は38.7%減の875億円、税引前利益は42.0%減の736億円、当期純利益は47.5%減の426億円となった。
パナソニック 取締役専務執行役員兼グループCFOの梅田博和氏は、「第3四半期においては、売上高では前年の需要増の反動などによって、くらし事業の国内家電やオートモーティブの車載機器が減収となったが、インダストリーの情報通信向け事業やエナジーの車載電池などの販売が増加したことに加えて、Blue Yonderの新規連結により増収になった。一方で、家電や空調などのくらし事業を中心に、原材料高騰が大きく影響したことに加え、Blue Yonder買収時の資産および負債の再評価に伴う影響などの一時的なマイナス要因もあり、減益になった」と総括した。
パナソニックでは、2022年4月からの持ち株会社制に移行するのに伴い、2021年10月から新体制をスタートしている。今回の決算発表からは、新たなセグメントで業績を開示している。
これによると、くらし事業の第3四半期累計(2021年4~12月)の売上高は前年同期比3%増の2兆7376億円、営業利益が30%減の1051億円となった。
また、第3四半期(2021年10~12月)の売上高は前年同期比2%減の9594億円、調整後営業利益は358億円減の402億円、営業利益が366億円減の378億円と減収減益になった。そのうち、くらしアプライアンス社の売上高は前年同期比4%増の2740億円、調整後営業利益は66億円減の221億円、営業利益が66億円減の221億円。空質空調社の売上高は前年同期比2%増の1622億円、調整後営業利益は106億円減の1億円の赤字、営業利益が112億円減の7億円の赤字。コールドチェーンソリューションズ社の売上高は前年同期比11%増の753億円、調整後営業利益は68億円減の69億円の赤字、営業利益が69億円減の70億円の赤字。エレクトリックワークス社の売上高は前年同期比1%増の2658億円、調整後営業利益は64億円減の137億円、営業利益が48億円減の140億円とした。
「第3四半期は、中国での洗濯機や冷蔵庫などの販売が好調であるほか、北米の食品流通、欧州の空調は堅調であり、海外は増販となった。中国ではオンライン販売が貢献し、2桁増になっている。だが、国内においては、供給課題があった洗濯機や、前年の巣ごもり需要の反動を受けた調理機器などの販売減が大きく、全体としては減収になった。2021年10月に発売したドラム式洗濯機が当社の事情で市場導入に手間取り、勢いが弱かったが、12月と1月に挽回している。冷蔵庫は健闘している」と総括した。
「くらしアプライアンス社は、中国で増販益があった一方で、日本の巣ごもり需要の反動や原材料高騰の影響がマイナスに働いた。原材料高騰に対しては、海外で段階的に価格の見直しを進め、一部では価格転嫁も行っている。また、日中合同による部材の合理化を加速している」とする一方、2022年4月以降は、国内家電に関しても、部材価格高騰の影響を、商品価格に転嫁していく考えも明らかにした。
また、「空質空調社は、欧州の販売は堅調だったが、空気清浄機などの空質事業や、日本のルームエアコンの販売減、原材料高騰により減益になった。原材料高騰への対応として、銅からアルミなど、代替材料への置き換えなどを進めている。コールドチェーンソリューションズ社は、北米販売が堅調に推移したが、原材料高騰や調達の課題に加えて、一時費用の計上がマイナスに影響。原材料高騰に対しては、北米での価格を見直し、調達の課題に対しては、部品点数の削減などの対策を進めている。エレクトリックワークス社は、海外での増販や固定費削減の効果はあるものの、ライティングなどでの部材調達の課題や、電材事業での仕入れ先の工場火災の影響によって減益となった。工場火災の影響は、第4四半期から緩和する見込みであり、海外の電材商品における原材料高騰への対応としては価格の見直しを進める」とした。
一方、オートモーティブの第3四半期累計の売上高は前年同期比7%増の7749億円、営業利益が207億円改善したものの27億円の赤字。「第3四半期は、第2四半期に比べて売上げが増加したものの、前年の自動車生産回復の反動があったことに加えて半導体や部材逼迫などによる自動車減産の影響が継続して、減収になった」という。
コネクトの売上高は前年同期比12%増の6481億円、営業利益は前年同期の146億円の赤字から426億円の黒字に転換。「第3四半期は部材調達の課題により、ノートPCは減収となったが、PCやサーバーの好調を受けた実装機や、米国および欧州などで回復傾向にあるプロジェクターが牽引した。また、Blue Yonderの新規連結がプラスに影響した」という。
Blue Yonderに関しては、「リカーリング比率が想定を上回る形で推移しており、2021年度の着地点も少し上回る形を想定している」という。Blue Yonderの2021年第3四半期の売上高は2億9300万ドルとなっており、リカーリング比率は69.1%となっている。
インダストリーの売上高は前年同期比16%増の8406億円、営業利益は162%増の653億円。産業用モーターや情報通信インフラ、車載用コンデンサ、EV用リレーなどの販売が好調だったという。
エナジーの売上高は前年同期比27%増の5680億円、営業利益が157%増の519億円となった。欧州乾電池事業の譲渡の影響があったが、EV向け車載電池やデータセンター向け蓄電システムを中心に増収となった。
その他では、売上高は前年同期比9%増の7322億円、営業利益が13%増の114億円。エンターテインメント&コミュニケーションでは、テレビ事業などにおいて、前年の巣ごもり需要からの反動減や、半導体を中心とした部材調達難の影響などにより減収。だが、ハウジングは、ニューノーマルに対応した新商品発売やデジタルを活用した営業の加速により、増収になったという。
梅田グループCFOは、第3四半期における経営環境の変化についても言及。「新型コロナウイルスの感染拡大による工場ロックダウンの影響は解消傾向にあるが、原材料の高騰、半導体などの部材不足の影響は継続している」とし、「原材料高騰は、主にくらし事業とオートモーティブ事業で影響が見られている。インダストリーやエナジーでは、合理化などでその影響を軽減している。半導体などの部材不足に関しては、エナジーを除く、すべてのセグメントで影響が出ている。経営環境の変化の影響を見極めつつ、適切な対応策を取っていく」とした。
原材料や部品の価格高騰の影響に関しては、当初は、年間で1000億円規模になることを想定していたが、「銅や鉄が高止まりしており、1300億円の影響があるとみている」と発言。「インダストリーでは、すでに上期から価格改定に取り組んでおり、第3四半期から第4四半期にはほぼ影響がなくなる。全体でも3分の1程度の価格転嫁ができている。だが、くらし事業部のBtoC関連が大きな影響を受けている」と述べた。
一方、2021年度(2021年4月~2022年3月)連結業績見通しは据え置き、売上高は前年比9.0%増の7兆3000億円、営業利益は43.1%増の3700億円、税引前利益は41.9%増の3700億円、当期純利益は45.4%増の2400億円としている。だが、調整後営業利益は350億円減の3650億円とした。
「調整後営業利益の下方修正は、自動車生産の減少や原材料高騰など、足元の経営環境やBlue Yonderの買収時における会計処理の影響など、一時的なマイナス要因を踏まえたものである。また、第4四半期において、資産売却益等が見込まれることからその他損益の見通しを350億円増の50億円とした」と説明した。
調整後営業利益における350億円の下方修正の内訳は、一過性の費用として、くらし事業で約90億円、Blue Yonderが約100億円。原材料と物流費の高騰の影響で約80億円、オートモーティブにおけるデマンドの減少で約70億円とした。
パナソニックでは、2021年10月時点で、新セグメントでの通期見通しを発表していたが、今回は、その見通しを修正している。
くらし事業は、売上高は前年比3%増の3兆6400億円と据え置いたが、調整後営業利益は前回公表値から180億円減の1550億円、営業利益が130億円減の1270億円とした。「調整後営業利益は、くらしアプライアンス社を除く、すべて分社で下方修正している」という。
また、オートモーティブの売上高は前回公表値から70億円減の前年比7%増の1兆800億円、調整後営業利益は70億円減の50億円、営業利益が70億円減の30億円。コネクトの売上高は前回公表値から50億円減の9200億円、調整後営業利益は50億円減の150億円、営業利益が40億円減の510億円。インダストリーの売上高は前回公表値から100億円増の1兆1100億円、調整後営業利益は10億円増の780億円、営業利益が据え置き740億円。エナジーの売上高は前回公表値から200億円の7680億円、調整後営業利益の650億円と、営業利益の610億円は据え置いた。
「くらし事業は、空質空調事業の販売減や、原材料および物流費の高騰、調達や生産の課題が影響している。オートモーティブは、自動車減産の影響や減販損、部材高騰などの影響が拡大したことにより下方修正。コネクトは、Blue Yonderの一時的な会計処理などが影響。インダストリーは、コンデンサなどの伸長により上方修正。エナジーは、為替の円安効果はプラスに働くものの、足元の原材料および物流費の高騰影響を織り込んだ」という。
一方、2021年度を最終年度としている中期戦略については、3カ年での1000億円の収益改善目標に対して、それを上回る1300億円を達成する見込みを示しながら、「固定費の削減や、構造的赤字事業への対策といった経営体質の強化に取り組んできた。コロナなどの大きな外部環境の変化があったが、経営体質強化の取り組みは継続しており、収益性は着実に改善している。第4四半期も取り組みを継続し、2022年度以降の新たな中期戦略につなげていきたい」と述べた。
なお、テスラ向けに開発している新たな車載電池である「4680」については、「量産に向けた試作ラインを新設するために、和歌山工場の改修をはじめている。性能を満たした試作品は完成している。2022年の早いタイミングで、試作ラインでの検証を開始していきたい」と述べた。
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