バーナーズ・リー氏創設のInrupt、プライバシー技術「Solid」の企業版をリリース

Stephanie Condon (CNET News) 翻訳校正: 編集部2020年11月10日 09時38分

 自分の個人情報を管理する権限を、企業、政府、病院などの組織に渡したくないと考えている人にとって、Inruptという新興企業は味方になるかもしれない。同社は、ユーザーが自分の個人情報をそれぞれ個別に保存し、各種サービスにアクセスする場合に限り、必要な情報のみを共有するという理念を掲げている。

Tim Berners-Lee氏
Tim Berners-Lee氏
提供:Stephen Shankland/CNET

 Inruptは、このようなデータの集まりを「ポッド」と呼んでいる。ポッドには、同社のオープンソースのデータストレージ技術「Solid」を使ってアクセスできる。例えば、フィットネスに関するデータを保存し、担当医が利用するSolidアプリがアクセスを要求する場合に、それを共有することができる。または、ポッドに写真を保存し、ベストショットの選択と印刷を、それぞれ別のSolidアプリプロバイダーに発注することができる。

 Inruptの背後にいる大物は、ワールドワイドウェブ(WWW)を発明したTim Berners-Lee氏だ。最高技術責任者(CTO)である同氏は、最高経営責任者(CEO)のJohn Bruce氏とともに同社を創設した。Inruptは、英国のBBC、NatWest Bank、国民保健サービス(NHS)に加えて、この数カ月間はベルギーのフランダース政府とともに、自社サービスをテストしている。現地時間11月9日には、このサービスを支えるSolidのエンタープライズ版「Enterprise Solid Server」を企業や組織向けに公開した。

 「われわれが今日公開する技術は、待ち望まれているウェブの軌道修正を実現するための1つの要素だ」とBerners-Lee氏は発表の中で述べ、「究極的には、この信頼と協調の新しい基盤が、ユーザーにも実質的なメリットをもたらすまったく新しいビジネスモデルにつながるだろう」とした。

 Inruptの理念が広く普及すれば、インターネットに転機が訪れ、パーソナライズされた広告を表示するためにユーザーのデータを収集するアプリやサービスからの脱却が進む可能性がある。一方、ウェブメールなど現在無料で利用できる多くのサービスが、ゆくゆくは有料になる可能性がある。

 Berners-Lee氏は標準化団体World Wide Web Consortium(W3C)の会長も務めているが、InruptのCTO職が自身にとって最も重要なフルタイムの職務だと、米CNETの取材に対して語った。

 SolidとInruptの課題は、最小必要数の人、企業、その他の組織に受け入れてもらうこと、煩わしさよりもメリットが勝るくらい簡単に使えるようにすること、悪用やハッキングの新たな対象にならないようにすることだ。最後の課題に対処するために、Inruptは名高いコンピューターセキュリティ専門家Bruce Schneier氏を、セキュリティアーキテクチャーの責任者として起用している。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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