「志村けんの息子です」「岡江久美子の息子です」「プロレスラー木村花の元カレです」などの動画を見かけたことがあるだろうか。もちろんすべて偽物だ。
このような故人の家族や犯罪者などを自称する動画を投稿するYouTuberは、「不謹慎系YouTuber」「炎上系YouTuber」などと呼ばれる。なぜ不謹慎系YouTuberが増えているのか。その背景と理由、若者に対する影響を見ていきたい。
事件や芸能人などが話題になるたびに、冒頭でご紹介したような不謹慎系YouTuberが登場するようになった。男性がひとり語りで真実や思い出を語るというタイプの動画が多いが、タイトルだけで内容は無関係な動画もある。
不謹慎系動画が生まれたのは最近ではなく、5年以上前からニコニコ動画などでも存在していた。「逆張り系」を芸風とするYouTuberもおり、一定のファンを獲得していた。最近でも、事件が起きる度に「○○の妹です」などと投稿する中年男性YouTuberもいるほどだ。
2019年10月に起きた首里城火災時に、「首里城を燃やしたのは僕です」という動画を投稿したYouTuberが登場し、メディアで報道された。事件の真相がわからない状態だったので話題になったが、その後事実ではないことが明らかになっている。このパターンの動画はその頃から定着し、目立った事件があれば同じ内容の動画が多数投稿される状態となっている。
投稿しているのは、20〜30代の男性が多いようだ。そのようなYouTuberの過去の動画を確認すると、もともとは普通の動画を投稿していたものの、再生数が伸びずに転向し、このような動画を投稿するようになったケースが多い。
「目立ちたい、人気者になりたい、お金を儲けたい。YouTuberになってその夢を叶えたい」と考える若者は少なくない。しかし、YouTuber動画はレッドオーシャン化しており、多くの人の考えることはすでにやり尽くされてしまっている。ただ動画を出すだけでは注目を集めたり儲けることは難しい。
ところが、コンテンツがなくてもこのやり方なら簡単に目立ったり、儲けたりもできてしまう。トレンドブログという、アフィリエイト収入目的に一時的に検索数が伸びている事件やトレンドネタを扱うブログも同じだ。話題の事件やトレンドネタを扱ったブログ記事がトレンドブログであり、同じネタを扱った動画が一連の不謹慎動画というわけだ。
もちろん、YouTube側でも対策はしている。YouTubeでは、「悪意のある表現」「個人のなりすまし」を禁止している。広告ガイドラインでも、「炎上を招く、他者を侮辱するコンテンツ」「個人もしくはグループに対する嫌がらせ、威嚇、いじめに当たるコンテンツ」は不適切とされ、広告が掲載されなくなる。規約違反で通報制度、広告の無効化、3度の違反警告でチャンネル停止と対策は講じているはずだが、対策は実態に追いついていないようだ。
同時に、不謹慎系YouTuberの動画を面白半分にチャンネル登録したり、好んで視聴する人も一定数いる。つまり、後々広告が掲載されなくなる可能性があっても、もともと注目もされず儲かりもしなかったYouTuberたちにとっては、やったが勝ち状態なのだ。
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