新型コロナウイルス関連

社内で「リモートバンドやってみた」動画を制作--協創で脱コロナ疲れを

山下知彦(ドリーム・アーツ CTサービス本部)2020年05月17日 09時00分

 この特集「十人十色のテレワーク」では、これまでオフィスを中心に仕事をしてきたビジネスパーソンが、いかにして自宅でテレワークの環境を作っているのか。また、外出自粛が長引く中、どのような工夫をしてテレワークを楽しんでいるのかを、実体験をもとに紹介していく。

リモートバンド動画の1シーン
ドリーム・アーツによるリモートバンド動画の1シーン

 今回は、大企業向けの業務デジタル化クラウド「SmartDB」や、多店舗ビジネスを支援するクラウドサービス「Shopらん」などを展開するドリーム・アーツの社内で立ち上がった「リモートバンド部」について紹介する。以下は、同社CTサービス本部の山下知彦氏による寄稿である。

社内で「リモートバンド部」プロジェクトが発足

 緊急事態宣言による外出自粛が長引き、心持ちが暗くなっている人も多いのではないだろうか。また、3月ごろから多くの人が未体験の「テレワーク」制度が積極的に導入されたことで、働き方に変化がみられた企業もあるだろう。

 「自宅で仕事をする」という非日常に振り回され、会社のメンバーと会えずに働く日々に、寂しさを感じている人も多いはずだ。結果、自粛による経済活動の低迷に加え、会社の生産性が落ちることで暗い気持ちに拍車がかかってしまう悪循環が生じている。

 コミュニケーションの方法もチャットツール「Teams」「Slack」や、ビデオ会議ツール「Zoom」を介したオンラインコミュニケーションが主流だが、いわゆる「オンライン疲れ」や、社内コミュニケーションの希薄化が課題となっている。

 そのような中、弊社(ドリーム・アーツ)では「協創力を究めよ」というスローガンのもと、リモートバンド部のプロジェクトが発足した。社内向けサプライズとして「バンドやってみた」動画を制作。社内で大きな反響を呼んだ。制作の流れを紹介する前に、ぜひその動画をご覧いただきたい。

2週間後のライブ配信に向け準備

 IT企業のドリーム・アーツは、幸いなことにテレワークに必要なインフラは整備されており、情報を伝達する手段や運用体制も確立されていたため、スムーズにテレワークに切り替えることができた。しかし、長期にわたるテレワークにより、かつては活発だった自社の雰囲気が変わっていることを、一社員である筆者も感じていた。社のスローガンである「協創力」の欠如である。

 ある日、雑談をしていたところ、「在宅でバンド組んでストリーミングLIVEをしたら面白いね」というアイデアが出た。何気ない一言ではあったが、久しぶりにギターを誰かと弾いてみたいワクワク感が募り、話は一気に進んでいった。我々ドリーム・アーツにはぴったりの企画だった。

 その日のうちに、メンバーをアサインした。まずは社内で各楽器の経験者、広報、ボーカル、デザイナー、映像編集を含む計7名をキックオフミーティングに召集、極秘プロジェクト「Cello&POPY」が始動した。

キックオフミーティングの様子
キックオフミーティングの様子

 ライブ配信日の目標はゴールデンウイーク前後。期間にして約2週間というかなり短いスケジュールだ。普通のバンド発表ならかなり熾烈だが、幸いにも収録のため、なんとか実現は可能だろうという見通しで開始した。年齢層の広い社内に向けて、曲は全員がなじみ深く、それでいて元気の出る曲をチョイスした。

 動画のイメージは、Googleの「Chrome Music Mixer」など、あえて何らかのアプリを使っている風に見せることでライブ感を出す「ライブ風」や「リモートオーケストラ/お家で踊ろう風」などのテイストが案として挙がったが、演奏を録音し、撮った動画に演奏を重ねる「アテレコ風」に決定。

 生配信でのアテレコは困難であることがわかったため、ライブで演奏しているかどうか、よりも、覆面バンド風に最後の最後まで誰が演奏しているかわからない、という演出にすることで、視聴者の興味を引く狙いとした。無理のない範囲で演出に凝ることを目指した。

収録進捗がリアルタイムで確認できるのは仕事と一緒

 そして、いよいよ音源の収録。ライブをするわけではないので各々が自分の空き時間に収録していく。普段から東京、広島、沖縄、中国・大連の拠点間の社内コミュニケーションは「Teams」を採用していたので、プロジェクトのグループチャットで逐一進捗が報告されるのは、さながらいつもの仕事の様である。

 ギター・ベースの録音にはiOS標準アプリの「GarageBand」を利用。ボーカル、ギター、ベースの録音だけではなく、ドラムの打ち込みまで身近にあるデバイスで手軽に完結できるのは嬉しい。iPhoneと楽器をつなげるオーディオインターフェースは「iRig」を利用した。「GarageBand」は標準アプリながら、多彩なアンプやエフェクトが搭載されている。これらのクオリティの高さとDTM技術の進歩に驚いた。

 ギターソロの音量と各パートのバランスやエフェクトのかかり具合を、エコーとリバーブを下げ細かく調整したり、アコギパートをエレアコから生ギターとマイク録音に録り直す……。初の遠隔共同レコーディングでとにかく楽しかったが、拘るとキリがないので程々に。パートごとに録音が進んでいくと、予想以上のクオリティに「おお、こう来たか」とニヤニヤしてしまう自分がいた。

 音源に加えて演奏風景も収録。共有方法はiCloudにファイルを保存して共有することにした。映像・音源はAppleの「Final Cut Pro」で編集し、配信は無料のライブ配信ソフト「Obs Studio」を選んだ。

「Final Cut Pro」の編集画面。このソフトでアテレコ映像を組み合わせた画面構成作成と映像と音源のタイミングを調整。ソフトでかなり高クオリティの動画が制作できる
「Final Cut Pro」の編集画面。このソフトでアテレコ映像を組み合わせた画面構成作成と映像と音源のタイミングを調整。ソフトでかなり高クオリティの動画が制作できる

Teams上の会話でプロジェクトが進んでいく。現場で得た気づきや感覚をチャットで共有できるのはメールにはない利点の1つであると改めて気づかされる
Teams上の会話でプロジェクトが進んでいく。現場で得た気づきや感覚をチャットで共有できるのはメールにはない利点の1つであると改めて気づかされる

 問題はドラムだが、家にドラムセットがないので、先述した「GarageBand」を使うことにした。ポチポチと打ち込むだけで音源を作れるのだから便利な世の中になったものだ。

 こうして音源が出来上がり、映像はドラムの一部を座布団、シンバルを鍋の蓋で代用、演奏は全力でエアドラムしているところを撮影。家にある道具を使ってドラムセット風に。ボーカルもマイクがあったので、それっぽくすることができた。また並行して若手デザイナーが制作していたロゴも完成し、ライブ配信の準備が整った。


ドラムセット映像の理想と現実
ドラムセット映像の理想と現実
最終打ち合わせの様子
最終打ち合わせの様子

サプライズのクオリティに社内が沸く

 前日から「12時に何かが起こる!と「Teams」に投稿。休暇のスタッフも多い中、「YouTube LIVE」に100名程集まった。そして当日、スピッツの名曲「空も飛べるはず」の「ドリーム・アーツ社員でバンド演奏してみた」動画が配信された。

 投稿時間は全員が視聴しやすいお昼時を選択。配信後には私のソロ演奏と共に、「協創力を高めて頑張ろう」というメッセージが表示された。現時点で総社員数を超える再生数を記録しており、社内からの評判も良かったので一安心といったところだ。

動画の最後は「STAY HOME!」で締められている
動画の最後は「STAY HOME!」で締められている

 緊急事態宣言は一部解除され快方に向かっているように思うが、オンライン上のコミュニケーションは今後も継続が予想される。オンラインだからこそ、即座に大量のデータのやりとりができる一方で、現場・現物に触れないオンラインでは、五感で感じる多様な”様子”や”雰囲気”は遮断され、対話の量は増えるが、その質は断片的となる。

 実際のオフィスでは無意識にインプットされる情報は多様で豊富。挨拶、笑顔の交換、冗談、笑い声、議論する声、人が作るワサワサした雑音や空気感……。普段は空気のように意識されないことが多いが、人間のパワーの源泉は「協創」だ。今回実感したことは、インターネット越し、テレワークでも不可欠で重要なのは、"協創ビタミン"ありのコミュニケーションだった。 

 ドリーム・アーツでは、リモートバンド部のほかに、リアル・オンラインに関わらず、筋トレ部や読書部、カフェタイムと称して意識的に雑談を設けるなどインナーコミュニケーションも大事にしている。ぜひみなさんの会社でも、こうしたオンライン活動をおすすめしたい。

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