“アフリカの奇跡”と呼ばれるほどの経済成長を果たし、IT立国を目指しているルワンダ共和国に、日本の大学生らを派遣し、ビジネス視察と起業体験をハイブリッドに提供する──。こんなユニークなプログラムが、2月下旬から約2週間にわたり実施された。
このプログラムを企画したのは自治体の神戸市だ。同市では“チャレンジしたい若者”を増やすために、米国のシード投資ファンド「500 Startups」と連携したり、シェアリングエコノミー事業者との提携を次々と打ち出したりするなど、さまざまなチャレンジングな取り組みをしている。その一環で、シリコンバレーに学生を派遣するプログラムを実施していたが、2019年からは、従来よりIT分野で親交のあったルワンダでも派遣プログラムを開始している。
私はこの起業体験プログラム「KOBE STARTUP AFRICA in Rwanda(神戸スタートアップアフリカ)」に同行し、参加者たちとともに、ルワンダに拠点をおくユニコーン企業やジェノサイド記念館などを訪れた。本稿では、プログラム初日から最終発表までの全工程をレポートする。
プログラムについて紹介する前に、そもそもルワンダとはどのような国なのか、簡単に解説しておきたい。ルワンダは、東アフリカに位置する人口1200万人ほどの内陸国で、国土は四国の1.5倍ほど。公用語は2008年から英語となっている。日本大使館によれば、現地在住の日本人は約150人ほどで、日系企業は小規模な会社を中心に27社ほどある。
ルワンダと聞くと、フツ族とツチ族の対立をきっかけに、わずか100日間で人口の1割近い80万人もの人々が虐殺された、1994年のジェノサイドを思い出す人も多いかもしれない。映画「ホテル・ルワンダ」や「ルワンダの涙」など、その凄惨な事件を描いた作品や書籍が数多く残されているが、実はその内戦から26年が経ち、今では“アフリカの奇跡”と呼ばれるまでに急成長を遂げている。
同国は2010年以降、平均7%前後の実質経済成長率を維持しており、世界銀行の「Doing Business(投資環境ランキング)2019」では、全世界191カ国地域中29位、アフリカ第2位にランクインしている。女性の議員比率は世界トップクラスの6割におよぶなど、女性が活躍している国という側面も持つ。
国土が小さく、資源も少ない国であることから、政府はITを基幹産業にすべくテクノロジーにも積極的に投資している。4Gのネットワーク網はすでに全国9割以上を網羅しており(まだ国民の多くは3Gを利用しているが)、2019年10月にはアフリカ初の国産スマホである「MaraPhone」を発売した。さらに、小学校の生徒たちには1人1台のPCが与えられている。
また、長期政権を維持するポール・カガメ大統領の手腕により、アフリカの中でも特に治安が良く、汚職もないと言われている。主要道路なども整備されており、毎朝職員が掃除をするためゴミもほとんど落ちていない。さらに最高気温も27度前後とアフリカとは思えないほど過ごしやすく、1年を通して気候が安定していることも特徴だ。そのため、アフリカの周辺国にビジネス展開する際のハブ拠点としても期待されている。
今回の起業体験プログラムに参加したのは、40名の応募者の中から選ばれた14名。神戸市では神戸市民であることにはこだわらず、全国から参加者を募っており、実際参加者のうち神戸出身者はわずか1名だけだった。
また、2019年に開催した第1回のプログラムは学生のみで実施したが、アイデアは良くても実現可能性が低かったりと課題も残った。そこで、今回はビジネス経験も豊富な社会人も混ぜることで、最終的に高校生2名、大学生(院生)7名、社会人5名というバランスの良いメンバー構成になった。
特徴的だったのは、留学や海外インターン、海外ボランティアなどの経験者が多いこと。SDGs課題の解決や、貧困の子どもを救いたいといった信念を持った学生が集まった。また、社会人もカンボジアでの大学運営に関わっている人、1000人以上の従業員を抱える企業の社長、自治体の職員、大企業の新規事業担当者、化粧品会社のマーケティング担当者など、バラエティ豊かなメンバーが揃った。
「とにかくアフリカに来てみたかった」「起業を学びたくて参加した」「自分探しに来た」「ボランティアに興味がある」。プログラム初日の自己紹介では、それぞれの参加者が、自身の半生や家族などのバックグラウンドエピソードを交えつつ、アフリカでの起業体験プログラムに参加した理由や目標を語った。
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