ドコモが発掘した“5G時代”の海外ベンチャーに注目--スポーツ映像配信や仮想空間ライブ

 5Gの商用サービス開始が間近に迫ってきた。携帯事業者の広告やメディアが発信する情報によって5Gに対する期待感が高まる一方で、実際のところ通信インフラが5Gになると何ができるのか、何が変わるのか、まだはっきりとしていない部分も多い。

 そのような状況の中、これから訪れる5G時代の一端が垣間見られるイベントが開催された。2月7日に、NTTグループのコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)であるNTTドコモ・ベンチャーズが「NTT DOCOMO VENTURES DAY 2020」を開催。

 同社が出資するベンチャー企業が展示を含めて30社以上登場するなかで、注目の海外ベンチャー3社が「フューチャープレゼンテーション」としてセッション枠で登壇。5G環境と親和性が高い先進的な技術やサービスをアピールした。

個々のスポーツ動画視聴環境を最適化する「WSC Sports」

 最初に登場したのは、イスラエルのWSC Sports。同社は、AIや機械学習を用いてスポーツ映像を加工し、視聴する個人の興味に合わせて映像を自動的に編集したり、さまざまなデジタルメディア向けに瞬時に最適化して配信できる動画生成技術で事業を展開している。

 登壇したWSC Sports Co-Founder and Chief Business Development Officerのアビブ・アーノン氏は、「スポーツコンテンツを所有している組織が、ファンに向けて映像を提供するにあたり、効果を最大化するためのテクノロジーを提供している」と話す。NBAやNFLなどと提携してグローバルにサービスを展開しており、日本でもJリーグ、Bリーグ、DAZN、楽天と協力して2019年からビジネスを始めているという。

WSC Sports Co-Founder and Chief Business
Development Officerのアビブ・アーノン氏
WSC Sports Co-Founder and Chief Business Development Officerのアビブ・アーノン氏

 技術的には、まずライブのスポーツ映像を同社のプラットフォームに取り込み、システムが試合を理解して何百もの個別のシーンのクリップに分割していく。それぞれのクリップに、このプレーがどれだけ素晴らしかったかというスコアとレーティングを付与し、メタデータがつけられる。

 メタデータがついたクリップをもとに、自動ですべての試合に対してハイライト映像を自動で生成する。その際に「従来3時間くらいかけて編集して作るような映像を、ワンクリック、10秒程度で作ることができる」(アーノン氏)という。

 スポーツ映像をファンごとに異なる形で提供することもできる。例えば、NBAにおいて八村塁選手の映像が見たいと登録すれば、八村選手を中心に編集された映像が届くという。SNSとの親和性も高く、映像はInstagram向けやTikTok、Snapchat向けなどに画面サイズを最適化した形で自動作成される。

Facebookメッセンジャーボットで映像配信している様子
Facebookメッセンジャーボットで映像配信している様子

 もちろん、スポーツビジネスの権利者にとってもメリットは大きい。「ファンのロイヤルティやエンゲージメントが増え、ビデオビューや映像資産が増える。マーケティングやブランディングで収益にもつながる。日本でこれからNTTドコモとともに、日本のスポーツマーケットと仕事ができることにワクワクしている」(アーノン氏)。

バーチャル空間でライブを開催できる「WaveXR」

 続いては、米国のWaveXR,Inc.が登場。同社は、インターネットの仮想空間においてバーチャルコンサートを開催・ライブ配信できるエンターテインメント基盤を提供している。同社CEOのアダム・アリゴ氏は、自社のビジネスモデルについて「WAVEというVRプラットフォームを提供し、そのプラットフォーム上で仮想のエンターテインメントコンテンツを作成、配信、収益化していくもの」と説明する。

WaveXR,Inc. CEOのアダム・アリゴ氏
WaveXR,Inc. CEOのアダム・アリゴ氏

 仕組みとしては、同社が提供するバーチャルライブ空間に、ライブを行うアーティストや演奏者をリアルにキャプチャーした形、あるいは拡張した形で投影し、そこで演奏やパフォーマンスを披露する。ユーザーはYouTubeやTwitchなどのストリーミングサービスで閲覧できるほか、VRヘッドセットを着用すると、聴衆もアバターになって一緒の“現場”に参加できる。

 バーチャルライブを行う際、アーティストはWaveXRのスタジオに赴く。そこでモーションキャプチャースーツを着用し、顔認識技術と併せて全身を認識することで、バーチャル空間にアバターとして再現される。そのままスタジオ内のブースでパフォーマンスを行い、その様子がリアルタイムで仮想空間内のステージに投影される。

 ライブの際には、デジタル空間ならではの演出が可能なだけでなく、インタラクティブ性やエンターテインメント性を加えることもできる。例えば、ライブの途中に大きなモンスターが登場し、それをライブの参加者が協力して倒すといった形だ。ほかにも、ライブ参加者のポジティブな反応に比例して背景演出を変えるようなこともできる。

アバターの参加者が協力してパフォーマーをモンスターから守る演出も
アバターの参加者が協力してパフォーマーをモンスターから守る演出も

 運営面でも、リアルなライブと比べてコストがかからないうえに、仮想アイテムの物販や投げ銭、ブランドスポンサーを付けることなどにより収益性も見込める。

 これまでに複数のDJイベントを開催したほか、2019年8月にはバイオリニストのリンジー・スターリング氏がコンサートを開き、40万人の参加者を集めたという。日本にもスタジオを開設する予定であり、2020年内にはエイベックス主催で、Vtuberのキズナアイなどによる3本のバーチャルコンサートの開催が決まっているという。

 「5Gの技術を使って様々なベストな手法を使うことができ、様々な国の人とバーチャルでつながれる。WAVEを通じて音楽のみならず、コメディ、スポーツにインタラクティブ性が含まれていく」(アリゴ氏)。

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