仮想現実(VR)は、この1年間で、注力する方向を劇的に変えたように見える。PCから離れ、画期的な「Oculus Quest」のような、オールインワンの独立型ヘッドセットへと転換しているのだ。
そのOculus Questによく似た、あるスタンドアロン型VRヘッドセットを、1月にラスベガスで開かれたCESで装着してみた。同会場で筆者が試した数多くのVRデモ機のひとつだ。この「Pico Neo 2 Eye」は、一般消費者が買える製品にはならないかもしれないが、近い将来の傾向を示すものとして注目に値する。Facebookの傑作Oculus Questと同じくスタンドアロン型VRヘッドセットだが、それだけではない。眼球の動きを追跡する機能もあるのだ。
アイトラッキングを専門とするスウェーデンのテクノロジー企業であるTobiiは、長年にわたり、VRおよび拡張現実(AR)の各種ヘッドセットに同社のハードウェアを組み込むことに取り組んでおり、組み込みの対象は、コンピューターにまで広がってきた(Dellの「ALIENWARE」シリーズにもTobiiの技術が使われている)。Tobiiのアイトラッキングを大手として最初に組み込んだVRヘッドセットは、2019年に発売されたHTCの「Vive Pro Eye」だが、これは企業向けであり、極めて高価だった。Pico Neo 2 Eyeは、手軽なスケールでは初めてアイトラッキングを搭載したVRヘッドセットで、Tobiiの技術とQualcommの「Snapdragon 845」チップを採用する。この組み合わせを筆者が初めて見たのは、2年前のプレビューだった。
Oculus Questは、その完成度のわりに、旧式の「Snapdragon 835」チップを使っている。PicoのVRヘッドセットの方が、理論上グラフィック性能は高いことになる。Qualcommは、それよりさらに高度なVRチップを既に用意している。最新の「Snapdragon XR2」プラットフォームは、グラフィックが向上するだけでなく、多数のカメラを同時に動かして外の世界を追跡できる。いや、外だけでなく、内に向けてユーザーの顔や目も追跡できるのだ。
Tobiiによると、アイトラッキングはこれからのVRとARで不可欠になるが、今すぐ主流になるわけではない。「アイトラッキングの組み込みに向けて、多くのメーカーと協力している」と、同社の最高経営責任者(CEO)で共同創業者のHenrik Eskillson氏は筆者に語った。「最初のデバイスが2019年に登場した。2020年にはそれが増える。エンゲージメントに基づくと、真の消費者層に届くのは2021年になると予測している。さらに普及して、それなりに業界標準になるのは、2022年、2023年くらいだ」。エンタープライズおよびハイエンド向けのARヘッドセット、例えば「HoloLens 2」や「Magic Leap」は既にアイトラッキングを採用しているが、現時点で、AR/VRのメインストリーム製品には搭載されていない。
アイトラッキングはかなり有用だ。何を見たかを全て記録できるので、ユーザーが見たいものに合わせてアプリのコントローラー入力を調整することができる。アイトラッキングとハンドトラッキングも、これからおもしろい方向に組み合わせることができそうだ。
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