糖尿病の患者は近年倍増しており、今や世界人口の約9%がこの病気にかかっている。糖尿病は、身体がグルコースを適切に処理できない病気だ。
糖尿病が患者の多い一般的な病気だからといって、深刻ではないということにはならない。糖尿病は失明や足の切断につながる危険性があり、心臓病のリスクを高める。英国民保険サービス(NHS)が入院治療に費やした10ポンド当たり1ポンドは糖尿病治療費であり、米国の年間治療コストは3270億ドル(約36兆円)だ。では、テクノロジーで糖尿病患者の状態を管理する方法を改善できないだろうか?
長年の間、糖尿病患者は血糖測定のために指の腹を針で刺し、血液を絞り出さなければならなかった。この血液で血糖濃度を測るために、携帯式計測端末を使う。これは理想的な測定方法にはほど遠い。しかも、この方法で分かるのは測定段階の血糖値だけで、長期的な変動は測れない。そこで、この面倒で苦痛を伴う測定を1日に何度も行う必要がある。
インスリンを使う糖尿病患者を対象とする技術は、数年前の連続血糖測定(CGM)端末の登場によって主流になった。CGM端末は、糖尿病患者の身体に目立たない状態で装着する小型の計測器を使って血糖値を継続的に測る。この技術は、糖尿病管理に変革をもたらした。血中グルコースの作用をより分かりやすくすることで、CGMはインスリン依存状態の糖尿病患者が測定値を適切な範囲に保つことを可能にする。
便利になっただけでなく、CGMは糖尿病患者の健康にも直接的なメリットをもたらした。血糖値をうまくコントロールできれば、衰弱や命に関わる合併症にかかるリスクを減らせる。
こうしたCGM端末のメーカーは現在、糖尿病患者が自分の状態をより適切にコントロールできるようにするために、幅広い技術動向を活用しようとしている。
CGM端末大手のDexcomのシステムは、「医療技術と消費者向け技術の混合」だと、同社の最高技術責任者(CTO)、Jake Leach氏は語る。従来のCGM端末は患者のグルコース測定値を別のデバイスに送るが、メーカーは今、ウェアラブルとスマートフォンの可能性を活用しようとしている。ユーザーは測定値をBluetooth Low Energy経由でiOSおよびAndroidスマートフォンやスマートウォッチなどのハードウェアに転送できる。
Leach氏は、「スマートフォンのプラットフォームでは、医療機器では一般的ではない多数の機能を利用できる」と説明する。
スマートフォンとモバイルアプリを利用することで可能になった新機能の1つは、リモートモニタリングだ。患者の保護者は子どものそばにいないときでも、Dexcomアプリを通じて子どもの血糖値を監視できる。
「患者の保護者は、子どもの状態を把握できるという“安心毛布”を獲得する。対処すべき問題が発生するとアラームが表示されるよう設定できるので、常に心配し続ける必要がない」(Leach氏)
リモート管理機能は、保護者と子どもの間での利用にとどまらない。ユーザーはスマートフォンのアプリで自分の血糖測定結果を友人や家族と共有できるので、血糖測定はソーシャルになった。Leach氏によると、測定値を他のユーザーと共有しているリモートモニタリングユーザーの平均血糖値は低く、低血糖になる時間が短く、正常値の時間が長いという。「リモートモニタリングを使う患者は使わない患者より血糖コントロールがうまくいっている。患者は測定値を共有することで、糖尿病の管理を手伝ってもらえるからだと、われわれは考えている」とLeach氏は語る。
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