AGCが、開発のスピードをARを使って加速させようとしている。11月27日、AR、MRコンテンツの開発などを手掛けるKAKUCHOのプロダクト「webAR」の試験導入決定を発表。12月から開発現場に導入していくという。
ガラスメーカーとして知られるAGCは、板ガラスをはじめ、自動車用ガラス、ブラウン管用ガラスバルブ、スマホ用化学強化ガラスなど、時代に合わせ、素材とソリューションを提供してきた。「20世紀は自前主義が主流で、クローズドな環境で研究開発を進めてきたが、IT革命により社会のスピードは加速。十数年の年月をかけてきた素材開発もスピードアップが求められている」とAGC 技術本部材料融合研究所管理チーム設備技術ユニットマネージャーの山内健氏は現状を説明する。
素材は組成開発からはじまり、生産プロセス、設備開発、量産といった流れで開発され、数十年かかることもあるとのこと。液晶ディスプレイ用ガラスに至っては1980〜1998年と20年弱の時間を費やしたという。
設備開発においては、3DCADや3Dプリンターを使って時間短縮に取り組んでいるが、図面や仕様書を使った説明では、リアルなイメージがつかみにくく、設備が出来上がってから作り直したり、改良が必要になったりと余計な時間とお金がかかるケースも出てきている。
こうした悪循環を解消し、無駄を排除することで開発のスピードを上げることが、AR導入の狙い。現状では開発設備の説明が上手など、経験豊富なスタッフと組むことがスムーズな開発につながっているというが、この部分を誰でも使えるツールに置き換えることで、サステナブルな開発環境構築を目指す。
導入するwebARは、専用アプリなどを必要とせず、ウェブブラウザ上で使用できる技術。現実の情報にデジタルの情報を組み合わせることで、あたかもその場にあるようにイメージを再現して、実寸大の製品のイメージを確認できる。
3DCADなどでデータ化されたものをファイル変換するようなイメージで、ARで表示できる状態にしていくとのこと。その際、見え方や材質情報を加え、変換したデータをウェブサイトにアップロードすることでAR化が可能だ。変換には数時間から数日程度が必要となり、データ内容によってかかる時間はさまざま。会場内で披露したAR画像については数時間程度で作成したとしている。
スマートフォンなど身近なツールを使い、複数人が同時に開発現場の状況を把握できることがメリット。現実の情報にデータを重ね合わせられるため、前後左右に人が入れるか、メンテナンスの際の動線は確保できるかなど、確認しながら設備導入を進められるとしている。
AGCでは、開発現場におけるVRの導入も進めている。VR空間作成時にコストと時間がかかるため、こちらはビル建設時など、全くないものを作る時に、活用していくとのこと。山内氏は「webARを始めとする最新技術を活用し、設備開発スピードの3割削減を目標にしている」とした。
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