レビュー

分解するとたった40cm、持ち歩けるデジタルギター「Jammy」--本物の演奏感をレビュー - (page 3)

基本的な奏法はカバー、ハーモニクスは非対応

 本物さながらの演奏感が味わえるJammyではあるが、弦を押さえる指の位置をネックに組み込まれたセンサーで拾い、弦の振動をボディ側のセンサーで別に取得し、鳴るであろう音を合成する、という機構上、本物とまったく同様の演奏ができるわけではない。可能な奏法、不可能な奏法をそれぞれ確認しておこう。

 まず、弦を押さえて単音とコード音は出せるし、振動している弦に右手をあてて音を止めるパームミュート、押さえていた左手の力を緩めたり弦に軽く触れさせたりする左手のミュートにも対応している。ファンクで多用される切れの良いコードカッティングや、ミュート気味シングルノートの演奏などが可能だ。

 左手で振動している弦を素早く押さえて音程を変えるハンマリングオン、押さえている指を弦に引っかけながら外すプリングオフもプレイできる。上手なプレイヤーなら、タッピングを駆使したライトハンド奏法も披露できるはず。

 弦を押さえた指をそのまま別のフレットへ動かして音程を変えるスライド、押さえた弦の位置を強制的に動かしてビブラートさせたり音程を上げたりするチョーキングは、注意が必要だ。Jammyの設定によっては、スライドやチョーキングで音が止まってしまう。

 筆者のJammyはスライドとチョーキングができないためサポートに問い合わせたところ、アプリのメニューから「Jammy Sensitivity Settings」を選び、ミュートやスライドに対する感度を「Sharp Right-hand muting sensitivity」「Slides/Fast hammer-ons sensitivity」で調整するようアドバイスされた。これで各弦の設定を操作したところ、とりあえずプレイできるようにはなった。本物の演奏感に近づけるには、かなり設定を追い込む必要がありそうだ。

弦ごとの感度調整なども可能
弦ごとの感度調整なども可能

 一方、弦に指を触れさせただけでは指の位置が検出できないため、ハーモニクスの再現は不可能。振動している弦に右手の指などで触れて出すピッキングハーモニクスにも対応していない。また、ネックに張られた弦の振動を検知しないので、ネック側の弦をピッキングしても音は鳴らない。あと、良い子には真似しないでほしいが、ネックベンドもできなかった。

ファーストギターとしては勧めないが

 ハーモニクスはまだしも、ネックベンドのような特殊奏法ができないことで困る人はまずいないだろう。また、弦を弾く力が弱いと音が出ず、音量のダイナミクス再現力は物足りないが、そのレベルを追求する練習ならそもそも本物のギターを使った方がよいと思う。

 基本的な奏法には対応しており、リアルな演奏感、電源さえ入れればチューニングなしで使える手軽さ、持ち運びが容易な携帯性、周囲に迷惑をかけない静音性、アプリの各種便利機能など、Jammyのメリットは多い。どこへでも持って行けるコンパクトさを追求しつつ、本物に近い演奏感を提供してくれる楽しいガジェットだ。左手の運指、右手のフィンガリングなどの練習にも適している。Jammyの制約を理解して活用すれば、ステージ上での演奏にだって使える。

 初めてギターに触れる人の1本目としては勧めないが、ギターを常に触っていたい人の練習ツール、トラベルギターには悪くない選択だ。

Jammyの紹介ビデオ(出典:Jammy Instruments/YouTube)


CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]