話を整理すると、Dragonflyプロジェクトのサービス開発がすでにかなりの段階まで進んでいる可能性が高く、また責任者らは当初から中国市場に再参入するつもりで本気で進めてきたことがThe Interceptのこの記事からは読み取れる。これは、Pichai氏の使ってきた「可能性をさぐる」「実験的な」といった言葉から連想されるイメージとは大きく異なる点だ。
またこのプロジェクトで生まれるサービスが、Googleの基準を満たしていない可能性も浮かび上がっている。基準を満たしていないというのは、法律、セキュリティ、それにユーザープライバシーに関して、社内外の大半の人を納得させられるようなきちんとした手続きを経ていない、ということ。「中国政府の監視や国民の人権」がどうこうというよりむしろ、この点――きちんとした手続きをないがしろにしてサービスを投入、というほうがより大きな問題で、後に大きな禍根を残すことになりかねないとの見方もできるかもしれない。
Pichai氏が議会証言で、「Dragonflyを投入する計画はいまのところない」と述べたことで、少なくとも2019年前半の投入というのはほぼあり得なくなったと思われる。ここまで騒動が大きくなると、サービス投入までダマテンで押し通すわけにはいかない。また、折からの米中関係の悪化で不透明な状況がさらに深刻化しているなかで、わざわざ論争の火種になりそうな愚かな真似をするとも思えない。そうしたことで、このDragonflyという実験はこのまま立ち消えになるというのが現時点での私の予想だ。Googleにとっては、またとないチャンスをみすみすやり過ごすことになるかもしれないが、ここは「損して得取れ」で良いのではないか、と思う次第である。
余談になるが、とくに共和党の高齢議員たちのレベルの低さにはあきれた人が少なくなかったようだ(揚げ足取りしても仕方ないので詳細は割愛するが)。たとえば、The New York Timesの記者であるKevin Roose氏は、ツイートで、「アーリントン(ワシントンDC郊外)にある(Apple Storeの)Genius Barで働いていると、こういう(無理難題を平気で言う)連中の相手をしなくちゃならないんだろうな(同情してしまう)」と皮肉っている。
I now know how it feels to work at the Genius Bar in Arlington. pic.twitter.com/HtXcEAqjwZ
— Kevin Roose (@kevinroose) 2018年12月11日
Alexis Ohanian氏(Reddit共同創業者、というより「プロテニス選手Serena Williamsさんの夫」のほうが今は有名)は、「議員の任期を制限しないといけない。テクノロジの基本的な部分についてわかっていないというのは、現代では社会の基本的な事柄についていけていないということ。それでは公僕としての勤めはこなせない」とツイートした。
Term limits. We need term limits for Congress. If you haven't kept up with the fundamentals of technology, you haven't kept up with the fundamentals of society. You're not a public servant anymore. Next, please. https://t.co/d2GpjFP5fi
— Alexis Ohanian Sr. (@alexisohanian) 2018年12月12日
日本にも「パソコンを使わない(もしくは、使えない)」のにサイバーセキュリティ担当大臣にアサインされてしまった議員がいるので、まあ五十歩百歩といったところかもしれないが……。
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