ライナフ、苦難のモノづくりを強みに変えた異色のスタートアップ--「Ninjalock」から新サービス - (page 2)

販売台数の50%が欧州向けという意外な理由

——海外でも販売されているのですか。

 実はNinjalockの販売台数の50%は欧州向けです。これも海外へ行ってわかったことなのですが、欧州では、サブプライムローンやリーマンショックの影響を受けて新築だけれど空室という物件がものすごく多いんですね。その先が日本とは全く違うところなのですが、日本は空室に人が入ると不法侵入ですよね。しかしスペインなどでは、勝手に入られても、人が住んでしまうとそこに権利が生まれて追い出せないらしいのです。

 鍵をつけてもピッキングされてこじあけられてしまうため、空室における鍵管理は大きな課題になっています。そこで、外の鍵を取り払って、内側からNinjalockだけで開閉できるようにしました。不法侵入対策として、大変効果的で欧州での販売数を伸ばすことができました。

 ただ、海外での認証や電波法、さらには特許などもあるので、本当に手間はかかりますね。そう考えると、本当にスタートアップはハードウェアをやらないほうがいいと思います(笑)。

スマートロック「NinjaLock」
スマートロック「NinjaLock」

——国ごとに違いがあるため、かなり大変そうですね。それだけに参入障壁が高く、独占できそうな市場のようにも思えます。

 コモディティ化するのも早いため、そうでもないんです。以前は開発費をかけても製品販売期間が5年あれば回収が見込めましたが、今は2年以内に開発費を回収するくらいのハイペースで売りきらなければいけない感じですね。そうでないと、次々に高機能なスマートロックが出てきてしまいます。

 ただ、元々やりたかったのは不動産の活用なので、ものづくりやIoTはそのための手段です。ライナフはハードメーカーではなくて、メインは、物件確認の電話を人の代わりに自動音声で応答する「スマート物確」、内覧希望者に電子キーを発行し、インターネット上で受け渡せる「スマート内覧」、シェアオフィス・コワーキングスペース運営システム「スマートブッキング」といった不動産サービスです。

——同様の不動産サービスもありますが、ライナフならではの特長は。

 すべてNinjalockと連動していることです。会員の方が、使う時間に使える分だけの鍵をきちんと付与することで、システムとハードウェアが連動できるパッケージ商品になっています。元は、スマートロックと連動して使えるスマート内覧サービスを考えていたのですが、予約の前に物件確認がしたいはずという思いからスマート物確を作り、一気通貫できるサービスが整ってきました。

 さらに、スマートロックを起点にしたサービスを広げていきます。1月に「サービスが入ってくる家」というサービスを発表したのですが、これは、不在時にも、荷物の宅配や家事代行などの各種宅配サービスが家の中に入って、サービスを受けられます。

 今いくつかの物件で進めていて、複数のサービスの導入が難しい場合には、清掃サービスに限って提供するなど、内容を変えながら導入を進めています。清掃サービスは週に一度簡易清掃が希望者の部屋にのみ提供するもので、ホテルのようなイメージですね。

 家事代行サービスは、バラバラに頼むと交通の移動時間がかかるため、割高になりますが、マンション単位で導入すると、カートで次々に回れるため、1世帯あたりの価格を安くおさえられます。新しい付加価値としてマンションデベロッパーの人たちと一緒に拡大していきたいと考えています。

 こうした入居者向けサービスはほかにも考えていて、例えば玄関脇に小さな冷蔵庫を設置して、そこに飲み物を提供しても、不動産の付加価値向上につながりますよね。水やジュースを運ぶのは重いですし、家に帰ったら冷えたビールが飲めるのもうれしい。飲んだ分だけ補充して、家賃と一緒に引き落とせれば、支払いの手間もかかりません。

 不動産経営は、今まで家賃のみが収入として捉えられていましたが、新たなサービスを導入すれば、それが新しい収入になります。クリーニングや洋服のレンタル、食材の買い物など、生活に密着したサービスは数多い。こうしたサービスの入り口として不動産を使ってもらい、決済までできるようになると、新たな収益が生み出せると思っています。

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