プレゼンテーションとは別に、ケイジ氏に本作の開発経緯などを聞いた。
――開発の経緯として、感情を持ったアンドロイドをテーマにした理由を教えてください
ロボットやアンドロイドというテーマは数多くの作品があり人気があります。そのなかで、アンドロイドの視点からストーリーを語るのが新しいことだと感じました。また、人間について語ること、そして過去だけではなく、現在や未来について語るうえで、人間そっくりの外見をしたアンドロイドは、とてもいいツールだと思ったからです。
――PS3の技術デモとして制作した「KARA」という映像が、Detroitの原点だと伺ってます。本作にも登場するカーラが組み立てられる光景を描いていて、とても印象的です。
KARAを作ったときはあくまでも技術デモでしたから、それがゲームになるとは思ってなかったですし、考えてもみませんでした。ただ、大変多くの方に見ていただいて注目を集めたんです。ゲーマーではない一般の人でも、映像を見て心を動かされたようだったんです。その反応を見て、アンドロイドだとわかっていても、こういう表現を行うと人は心を動かされるんだとわかりましたし、アンドロイドを使った感情に訴えかけるアプローチが新しいものになるとわかりました。
――舞台をデトロイトにした理由はなんでしょう。
興味深い歴史があるからです。かつては産業界の巨人と言われていましたが、没落して復活しようと頑張っている都市です。歴史的に見ても公民権運動などと関係性のある街だったので、そういう背景も私たちが作りたい物語にマッチすると思ったからです。
――役者の方がモーションキャプチャーを含めて演じていますが、アンドロイドを演じるにあたってのアドバイスは行いましたか。
ロボットだと思って演じてほしくないと思ってましたし、人間としか思えないようにしてほしいと。ただ、ゲームの開始時点では感情がないというキャラクターとして演じてほしいということと、アンドロイドによっても感情の持ち方が違うことはお話しました。例えばコナーは人間の感情を真似ることができるのですが、コナー自身が感情を感じているわけではなく、交渉のために必要だからそうしているだけです。そこは留意してほしいと。あとメインキャラクター3人については特に、感情を初めて感じる瞬間があって、そこを丁寧に表現してほしいと伝えました。
――序盤をプレイしただけでも、近い未来に予想される未来を感じられるのですが、ここまでアンドロイドが発達したときに、人間社会にどう影響を与えると思いますか。
私がDetroitで描いたような人間そっくりのAIやアンドロイドが誕生した時に、人間がどう反応するか……、それは正直に言うとわからないですね。技術の進化を予測するのが難しいというものもありますし、技術自体に良い悪いという性質がなく、人間が何をするかによって依存するというのがあります。たとえば、AIは危険な存在になりえるから、人間が慎重に扱わないといけないと警告をする人たちはいます。ただ技術は便利なものですし、新技術に危険性があるからといって、それを拒むのは難しいでしょう。
またDetroitでは、失業率が高くなってしまった未来を描いています。そのほうが技術のネガティブな面が伝えられると感じたからです。ただ、私個人としてはAIの発達や技術の進化によって無くなる仕事もあるかと思いますが、それに代わる新しい仕事が生まれるので、失業率自体が高まるということはないと思っています。
――ゲームをプレイするにあたって見てほしいところ、シナリオに込めたメッセージはありますか。
まず一番は“感情”を感じてほしい。いろんな感情を深いところまで感じてほしいです。ゲーム内では自分たち自身の未来、社会の未来、そして渦巻く偏見など、社会に存在するものに関していろんな選択を下さないといけないですが、そこを選んで自分の物語を楽しんでほしいです。
そのうえで、ゲームで描かれているテーマを少しでも考えてほしいですし、何かを考えるきっかけとなればいいと思います。従来のゲームでは、現実からの逃避やファンタジーなどのものが多かったので、ここまで重いテーマは、ゲームとして触れられていませんでした。そしてそれを扱うことがひとつの挑戦でもありました。現実の世界を見て考えるゲームとして楽しんでほしいですし、ゲームで重いテーマを扱ってどういう反応を示すのか、そして受け入れられるのかが気になるところですね。
(C)Sony Interactive Entertainment Europe. Developed by Quantic Dream.
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