働き方改革は労働時間削減が主体--ビジネス成長意識やデジタル活用は不十分

 日本オラクルは、働き方改革への取り組みとデジタル活用について管理職の立場からみた取り組みの現状、課題や効果、今後の期待に関する意識調査を実施。11月1日付けで結果を公表した。この調査は慶應義塾大学大学院経営管理研究科岩本研究室の協力により、従業員100名以上の国内企業で働く部長職以上の管理職412名を対象として、10月に実施したもの。

 働き方改革の目的については、「生産性向上」が48.7%で最も多く、「ワークライフバランスの実現」(44.9%)、「コンプライアンス遵守」(41.3%)と続く(※回答者数341名)。働き方改革本来の目的が生産性向上という認識は十分にされているとしている。その一方で、それ以外に高い回答率となったのは、働き方改革関連法案への対応や社員の働く環境改善、健康増進や満足度向上などとしており、自社の持続的成長や競争力強化など生産性向上によるビジネス成長を直接的に示唆する回答は少なかったという。

 働き方改革の効果については、「効果が出ている」という回答は341名中45%、「効果が出ていない」という回答は46%となっている。また、働き方改革の主目的は「生産性向上」と認識しているにもかかわらず、「生産性を測定する仕組みの有効度合い」について、412名の77%が「十分ではない」と回答。さらに生産性と人事評価の連動度合いについては80%が「十分ではない」と回答しており、働き方改革と従業員の評価が連動していないとしている。

 働き方改革の取り組みでうまくいっているものについては、「残業時間の削減」が57.8%と多く、さらに「有給休暇の消化促進」(38.7%)、「女性活躍の支援」(30.2%)が挙がった(※回答者数341名)。逆に、うまくいっていないものについては、「人事評価指標・方法の変更」(22.5%)、「柔軟な勤務制度の導入」(22.9%)、「残業時間の削減」(19.9%)の3つが挙がった(※回答者数341名)。

 労働時間の削減をはじめとする労働環境改善については、積極的に取り組んでいる一方で、うまくいっていないという回答の上位にも挙がっているという。この点について「実際の業務量を減らすための取り組みを行っていないにもかかわらず、労働時間だけを削減する点で無理が生じていると感じている人が多いからと考えられる」と同社では分析している。

 デジタルテクノロジの活用については、「積極的に活用している」と回答したのは412名中7%。51%が「活用していない」もしくは「あまり活用していない」と回答しているという。「活用している」と回答した中での挙がった具体的なデジタルツールとしては「経理・財務システム」、「グループウェア」、「ビデオ会議システム」が上位にあげられており、働き方改革以前からのデジタル活用と大きな変化は見られない。そのため、生産性向上のためにデジタルを積極的に活用しようという動きは、まだ鈍いと考えられるという。

 今後デジタルが企業の将来的な成長に貢献すると思うと回答したのは、全体の74%を占めた。中期的にIoT、ビッグデータ、ロボット/RPA, AIなどの最新テクノロジーによって生産性を向上したい分野としては、販売・営業業務と製造・生産業務が上位を占めたとしている。

 今回の調査について、慶應義塾大学大学院経営管理研究科の岩本隆特任教授は「日本企業は労働時間で勝負するフェーズから生産性で勝負するフェーズに移行する必要性に迫られていると言えます。そのためにまず、生産性をどのように測るのか、測った上で生産性をどのように向上させるのかを考えなければいけません。生産性を測るには、現在分散して管理されている、人材に関するデータ、従業員の行動に関するデータ、企業の業績に関するデータなどを連携させて統合的にデータマネジメントが必要になります。それに連動し、人事評価制度も時間に代わる評価指標を作ることが必須です。さらに、デジタルへの取り組みとしては、テクノロジを活用することが目的ではなく、従業員ひとりひとりが、わくわく、いきいきと仕事をすることをサポートするものでなければなりません。最先端のテクノロジを活用することで、従業員を単純労働から解放し、付加価値の高い仕事に集中できる環境を構築することが必要不可欠です」とまとめている。

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