新潮流「ダイナミックリターゲティング」

ダイナミックリターゲティング広告は「真のパーソナライズ」を実現させた - (page 3)

宮本潤 (Criteo)2015年03月19日 08時00分

 具体的に運用施策は「タグ」「データフィード」「入札」の3つの観点で整理できます。本稿では、ダイナミックリターゲティング運用に特化した「タグ」「フィード」の役割をご紹介します。

タグ:

 ディスプレイ広告においては、セグメントやマークの対象として、リスティングでのキーワード同様に「全体母数を上げる」「CVRが高いと想定されるユーザーが踏んだページに設置したタグで切り分ける」という手法が想定されます。

 一方ダイナミックリターゲティングにおいては、媒体の設計思想にのっとったタグを実装することが最も重要です。これは前にご紹介した「訴求の自動選択」という性質上、人間の恣意的なタグ設置がレコメンドの予測精度を鈍らせる可能性があるからです。

 たとえば、A-Zという商品を保持するサイトが、A-Dという商品カテゴリに対してのみタグを設置した場合、取得できるデータは当然A-Dのみになりますが、これでユーザーのすべての行動を捉えたレコメンドを実施できるでしょうか。

 このように、注意したいのは“タグとセグメントを紐付けて恣意的なセグメントを作成することが悪影響をもたらす媒体もある”ということです。タグから全データを取得して配信ロジックを組み立てていく媒体なのか、特定の恣意的なセグメントを許容できる媒体なのかを把握したうえでタグを実装する必要があります。タグの設置はインプレッション、CTR、CVRといったすべての指標に大きく影響するため、媒体のアルゴリズムを十分に活かすという視点が必要です。

フィード:

 ダイナミックリターゲティング広告におけるデータフィードは、クリエイティブとランディングページを規定します。フィード内に含まれるテキスト情報と画像情報は、直接バナーに反映されるため、バナーに表示される限界の文字数を考慮しながら、商材の訴求ポイントを的確に表現する必要があります。そしてもちろん、その情報をフィードに反映させることも必要です。

 たとえば、アルバイト求人応募が対象のサイトであれば「仕事内容」「地域」「時給」「最寄駅」「求人の掲載残日」といった情報のうち、何をバナー表示すれば訴求力が高まるのか、という“プランニング”の要素と、そのデータ自体をどのようにフィードに含めるか(どのようにほしい情報を取得し、フィードを作成するか)といった“システムの理解”が求められます。また、フィードにおける「画像」や「テキスト」はCTRへ影響を与え、当然ランディングページはCVRに影響を与えます。

 なおランディングページの最適化については、アクセス解析に近い領域になるので、今回はご紹介を控えます。

・アドテクノロジ時代のマーケティング担当者に求められる視点

 リターケティング(さらには既存のインターネット広告)は、セグメントのきり方と、そのセグメントへのA/Bテスト、ブラッシュアップが王道といえる最適化方法でした。いわば、これは人の手による改善です。

 一方で、本章でご紹介したように、ダイナミックリターゲティングは、セグメントや訴求をアルゴリズムがカバーしてしまうために、運用レバーが異なる点に注意する必要があります。

 ダイナミックリターゲティングに限らず、今後もアルゴリズムを使用した広告手法は進化を遂げていくと思われます。過去の手法にとらわれず、機械・アルゴリズムに頼る部分を見極め、人間の手でしかできない最適化観点を保ちつづける姿勢が、アドテクノロジ時代のマーケティング担当者に求められているのではないでしょうか。

 さて、冒頭の質問に戻ります。実は現在最強のチェスプレイヤーは、コンピュータでも人間でもありません。

 “コンピュータを上手く活用した人間のチーム”なのです。

宮本 潤

Criteo

スペシャリスト アカウントストラテジー

2007年、アイレップ入社。約7年間、SEM/ディスプレイ/アプリインストールキャンペーンといった運用型広告のコンサルタント兼営業を担当。2014年より現職。

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