反応を見ながら広告の内容を変えるスタイルはコストがかさむように思えるが「すぐに手を打つ方が、数カ月経ってから修正するよりもコストは低くて済む」と横山氏は話す。
ただし、そのためにはデータが必要になる。「勘、度胸、経験は重要だが、マーケティング施策が細かくなり、とにかく数をたくさん打つ時代から、どんどん打って、どれくらい当たったのか実証して誤差をなくす時代になっている。どのくらい打って、どの程度当たったのかがわからない、では次の手が打てない時代になっている」。
データを分析し、ターゲットに合わせたOne to Oneコミュニケーションを実施していくためには、DMPが必要になるというのが横山氏の主張だ。
これまで企業は自社データのみで分析をしてきたが、それはユーザーの実情を正しく反映したデータとは言い難い。自社が保有するデータ以外も活用することで、顧客ごとにストーリーを持つカスタマージャーニーを可視化し、最適な広告を打っていく必要がある。
その際、重要になるのがデータを分析する人材である。この人材には、データのプロである「データサイエンティスト+企業内マーケターのコンビで臨むべきと横山氏は指摘する。
「米国のドラマ『24』には、天才的な分析官クロエが登場する。しかしクロエは、ジャック・バウアーの指示によって分析することで、分析能力が生きる。企業も、データのプロであるデータサイエンティストに企業内マーケターが指示を出すスタイルをとることで、適切な分析ができるようになる」。
データを分析し、リアルタイムに広告に生かすマーケティング時代には、デジタル化の進展によって起こったもう1つの変化がグローバル化だ。例えばユニリーバではオランダ本社で統一マーケティングを行う戦略を採用した。こうしたグローバルで統一戦略をとる企業が増えていることはこれまでとの違いといえる。
「もちろん現場ではローカルな違いが色々ある。日本の現場はグローバル統一戦略にそぐわないという声があることもよくわかる。しかし、デジタルとグローバルには表裏一体なところがある」。
新時代の広告マーケティング戦略を日本で実現するため、横山氏は様々な企業と共同で、デジタル時代におけるマーケティングのプロフェッショナル集団「ベストインクラスパートナーズ・プロデューサーズ」を設立した。ただ、こうしたプロフェッショナル集団に頼るだけでは企業のデジタルマーケティング戦略は十分ではないともいう。
「最近、コミュニケーション設計をする人がいないので、中に入ってアドバイスしてくれませんか? といった依頼がかなりある。データを集めてもすぐに結果は出ないし、手離れも決してよくない。そうしたことを考えると、外部から人を入れただけでは十分ではなく、社内で人材を育てていく必要がある。
ジョブ・ローテーションをきちんと行い、様々なマーケティング知識を持った人材を育成が大切だ。ツールやマーケティングテクノロジも重要だが、人材も重要なのがデジタルマーケティングだ。統合的に組み立てていかないと、デジタルマーケティングは立ち行かなくなる」
また、こうした組織の変化を実現するために不可欠になるのが、トップの認識である。「欧米ではトップダウンでデジタルマーケティングを実践している企業も出てきている。日本でも、そろそろトップダウンでデジタルマーケティングを実践する企業が登場してもよい時期ではなだろうか」と横山氏は言い、セッションを締めくくった。
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