CNET Japan Live 2014 Winter

広告やメディアで人は動かせないのか--ブルーカレント本田氏とLINE田端氏が持論を語る - (page 2)

「不易流行」で物事の本質を見極めること

 毎年のように登場する新たなマーケティング手法。時代によって変化していくそうした手法名も、本質的なものは変わらないと田端氏は語り、流行やバズワードに踊らされるのではなく、変わらないものに着目すべきと説く。「『不易流行』という言葉を最近よく使っている。本質とはなにかを考えること。時代が変わっても変化しない広告やマーケティングの本質を考え、それを基盤に新しい変化を取り入れていくことが大事」(田端氏)。

 本田氏は、「日本では不易のバランスが悪い」と指摘。手段論ばかりの議論は流行だけであり、不易についても見直すことが必要と強調した。マーケターそのものが、流行に踊らされるという意味で、「マーケティングに従事している人そのものがマーケティングリテラシーが低いのでは。バズワードに乗っかり、なにかを仕掛けたら人は動くと思いがちだが、日本の消費者のリテラシーは実は高い。もっと消費者と向き合うことが重要」と苦言を呈した。


ブルーカレント・ジャパン代表取締役社長の本田哲也氏

 それを踏まえた上で、本田氏はこれからの広告やマーケティングに必要な6つのステップを提示した。1つ目は「目的を明確にすること」だ。誰になにを届けたいのかを詳細に考えることが必要だという。2つ目は「ターゲットのインサイトを洗い出すこと」。表面ではなく、消費者が本当に求めているもの、口には言わない求めている体験を捉えることが重要だという。3つ目は「目的とインサイトをお見合いさせること」。インサイトと目的の方向性を合致させなければいけない。

 4つ目は「心の沸点を起こすためになにを伝えるか」、そして5つ目に「心の沸点の体験となるコンテンツを用意すること」だ。消費者が感動したり共感を生むためのユーザエクスペリエンスを考えたサービス設計を行うことが大切だという。そして最後に6つ目は「お金がかからない順に伝える施策を決めていくこと」だ。まずは自社やPRをもとに施策し、最後にオウンドメディアでできないことをペイドメディアで実施していくべきと語った。

 田端氏は、ペイドメディアはすでに生まれている消費者の“心の火種”を着火させるものと表現する。「火種のないところでは人は感動したり、行動したりしない。お金だけでどうにかしようとするのではなく、製品と消費者との関係をきちんと考え、消費者のインサイトに合致したものを考えて施策を行えば、少ない予算で大きな効果を上げることができる」(田端氏)。

あきらめるべきことと、あきらめてはいけないこと

 これらを踏まえて、改めて2人に「あきらめるべきものとあきらめてはいけないもの」について質問を投げかけた。田端氏は、たくさんの人にリーチしたら人が勝手に動くと思ってはいけないと強調する。本田氏のゴルフクラブの例えと同様、届けたい消費者に向けてメディアやツールを使い分けることの重要性を改めて語り、その上で、自社の製品の良さにマーケターが気づくことが最も必要だと指摘する。

 「お金をかけても、駄目なものはどうにかしようとしても駄目。そこはあきらめるべき。しかし、宣伝側ではく事業側がまだ気づいていない製品の魅力があるかもしれない。製品の社会性や新たな価値を見いだせれば、まだまだチャンスはある。そのためにも、製品を心の底から良いと思い、あきらめずに研究や開発、分析や考察をしてほしい」(田端氏)。


 本田氏は、企業は伝えるべき良さを見つけられていないと指摘。自社の良さを見出し、日々地道なフィールドワークなどによって分析した消費者のインサイトなどをうまく重ねあわせることが、今後はさらに求められるとした。「あきらめる、という言葉がネガティブに捉えられがちだが、あきらめるは本来は『明らめる』と書き、物事の道理や真理を明らかにするということ。物事の本質をきちんと見極め、小さなこだわりを捨てて、地道なことや新しいことに取り組んでもらいたい」(本田氏)。

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