ビデオ広告にもさまざまな種類があるが、ヤフーでは大きく「インストリーム広告」と「インスクロール広告」の2種類を展開している。インストリーム広告は、動画サイトで視聴前に流れるビデオ広告のこと。同社では、月間1500万ユーザーが利用する無料動画サイト「GyaO!(ギャオ)」などで提供している。松原氏によれば、15~30秒のインストリーム広告を最後まで見る“視聴完遂率”は84%に及び、1分以上の長時間の広告も70%の人が最後まで視聴するという。
「YouTube」などユーザー投稿型(UGC型)の動画サービスは10~20%程度といわれているから、これは驚異的な数字だ。ただし、GyaO!とYouTubeではビデオ広告の性質が少々異なる。GyaO!は広告を表示することで、本来は有料の映画やアニメの無料視聴を可能にしているため、YouTubeのように“○秒待てば広告をスキップする”といったこと自体ができない。つまり、ビデオ広告を見たくなければブラウザを閉じるしかないのだ。それでも、約8割が最後まで広告を視聴する媒体であることは好意的に受け取られており、継続的に出稿する広告主もいるという。
「日本ではUGC型のユーザーが主と思われているので、スキップができたほうがユーザビリティとしては良いのではないかという広告主の方もいるが、そうではなく良質な映像コンテンツがあるからこそ、その広告もきちっと見てもらえて高い効果が出ている。また、映像トピックスを始めとして、ヤフーにはコンテンツを選ぶ“編集力”がある。ここが、プラットフォームであるUGCとプレミアム媒体の違い」(松原氏)。
もう1つのインスクロール広告は、主に動画以外のページで表示するビデオ広告のこと。たとえば、PCでYahoo!ニュースを読みながら画面を下にスクロールしていると、ユーザーコメントの前で動画が再生されるようになったことに気づいた人もいるだろう。これは、ウェブページにおいて可視領域が50%を超えた際に、ビデオ広告が自動再生されるインスクロール広告によるものだ。インスクロール広告を1週間1000万viewsで配信すると、500万人にリーチできているという。
さらに同社ではビデオ広告を配信するだけでなく、広告主の映像制作も支援している。画像編集ソフト「Photoshop」などクリエイティブツールを展開するアドビシステムズと提携し、社内にクリエイティブスタジオを設けて、映像制作やデジタルアセット管理ができる体制を構築。さらに、自社のサイトで映像を配信したい広告主向けには低価格でインフラも提供している。今後は、リアルタイム検索やマルチメディア検索の機能を強化し、より広告主のビデオ広告が露出されやすい環境も整えていきたいとしている。
ビデオ広告への参入を発表して半年が経ったが、「引き合いはかなりある」と松原氏は手応えを語る。同社では今後も、(1)Yahoo! JAPANの持つメガリーチ力、(2)GyaO!での高い視聴完遂率、(3)他の広告メニューを活用した再アプローチ、などの強みを活かして、ビデオ広告市場での優位性を高めたい考えだ。
また、日常的に映像に触れられる“映像ポータルサイト”を目指し、「ユーザーがどのようなシーンでどんなコンテンツをどういう形で楽しみたいのかを考え、それぞれのサービスに適した映像を届けていきたい」(松原氏)とした。
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