「Macintosh」30周年--その誕生、試練、残したもの(後編) - (page 3)

Dan Farber (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2014年01月29日 07時30分

 1995年のSmithsonianとのインタビューで、Jobs氏はデスクトップパブリッシング分野でのAppleの成功に思いをめぐらせた。

 「ほぼ最初からAppleにいたわれわれは、信じられないほど幸運な理由で、然るべきときに然るべき場所にいるという幸運に恵まれた。われわれが力を尽くして目指したものによって、技術的な卓越性と革新の価値だけでなく、より人間的な革新の価値も具現化された。前者はわれわれなりに実現できたと自負している。私がAppleで最も誇りに思っているのは、技術的なものと人間的なものが結びつくことだ。例えば出版がそうだった。Macintoshは基本的に出版と印刷に大変革をもたらした。印刷の技巧を技術的な理解や卓越性と組み合わせて、それを電子的に行う。それら2つが融合され、人々は難解なコンピュータコマンドを理解していなくても、コンピュータを利用できるようになった。私が最も誇りに思っているのは、それら2つが結びついたことだった。それはApple IIで現実になり、Lisaでも現実になった。ただし、Lisaはほかの部分に問題があり、市場で成功を収めることはできなかった。後に、それはMacintoshにおいて、大きな規模で再び現実になった」

Macintoshの遺産

 Macintoshは発売後の30年間で浮き沈みを経験してきたが、良い年の取り方をしており、コンピュータのBMWという評判を維持している。iPhoneと「iPad」が登場するまで、MacintoshはAppleの売り上げの大半を占めていた。今では、その割合は15%以下に縮小しているが、Appleは米国で約10%の市場シェアしか獲得していないにもかかわらず、PC市場全体の利益の半分近くを生み出している。

 「個人的には、Macは一般向けのコンピューティングに大変革をもたらしたと考えている」とMurray氏は述べる。「Microsoftは『Windows』を1000倍良いものにすることを余儀なくされた。ハンドヘルドデバイスやタブレットは、ドロップダウンウィンドウ、グラフィカルインターフェース、ポインティングデバイスといった初期のコンセプトを大量に取り入れている。ほとんどはXeroxのパロアルト研究所(PARC)が発明したものだが、多くの人が購入できる価格で商品化したのはSteve Jobsだ。本当の意味で長く語り継がれるMacの影響は、Steve Jobsを有名にしたことかもしれない。また、彼はMacのおかげで復帰してAppleを救うことができた。Macは彼とっての第一幕だったが、もしかすると、彼の最も革新的な演目だったのかもしれない」(Murray氏)


提供:Apple

 MacintoshはSteve Jobs氏を有名にしたが、Appleが自らの長所に再び気付くのは、さらに聡明なって経験をより多く積んだJobs氏が1997年に同社復帰を果たしてからだった。その長所は、「Going the distance」(最後までやり抜く)と表現することもできるかもしれない。Macintosh発表直後のインタビューで、Jobs氏は次のように述べていた。

 「Appleの最初のパンフレットを読むと、大見出しに『Simplicity is the Ultimate Sophistication』(平明こそ究極の洗練)と書かれている。何を言いたかったのかというと、最初に問題に取り組むときは、問題を理解していないので、非常に単純に思える。その後、問題を真に理解し始めると、とても困難なので、極めて複雑な解決策を思いつくようになる。ほとんどの人はそこでやめてしまう。だが、夜遅くまでその問題に取り組み続けて、最終的に問題の根底を成す原理を理解し、優雅なほどシンプルな解決策を思いつく人も、わずかながらいる。しかし、最後までやり抜いてそこにたどり着ける人はごく限られている」

 Macintoshの誕生から30年たった。そして、Appleは今も物事をシンプルな状態にして、最後までやり抜こうとしている。

 Macintoshチームとその子供。チームメンバーであるLarry Kenyon氏とPatti Kenyon氏の赤ん坊が前列に写っている。
Macintoshチームとその子供。チームメンバーであるLarry Kenyon氏とPatti Kenyon氏の赤ん坊が前列に写っている。
提供:Apple/Macworld

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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