“聖地巡礼”を町おこしにつなげるスマホの可能性--「ガルパン」「あの花」など - (page 2)

明石竹史(ドコモ・ドットコム)2013年11月15日 07時30分

 その聖地巡礼を後押しするのがリンク社の提供するアプリ「舞台めぐり ガールズ&パンツァー編」(Android版iOS版)である。このアプリは、スマートフォンのGPS機能を用いる形で、地図上にアニメで取り上げられた場所を表示する機能やキャラクターと写真を撮影できる写真フレーム、撮影した画像をアプリ内で他ユーザーと共有する機能、スポット近くに来たときだけオリジナルボイスが聞ける機能等、聖地巡礼をより楽しめる機能が実装されている。その他、訪れる前に地図上でルートを探索することが可能となっており、ロケ地を効率的に巡るルートを計画することもできる。しかも、アプリ自体は無料で提供されているため、ユーザーが手軽に楽しむことができるのも大きな魅力となっている。

 「ガルパン」と同じ聖地巡礼の事例として「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」が挙げられる。こちらは、疎遠になっていた小学校時代の仲良しグループが、高校1年の夏に再度集合し、改めて友情を深める姿を描いた青春ストーリーである。

 アニメ作品内で舞台となった埼玉県秩父市の風景や街並みを忠実に再現しており、放送直後から聖地巡礼に訪れる観光客が増加、市では半年間で約8万人が訪れたと試算している(秩父市長『久喜邦康の市長ブログ』2012年2月21日より)。放送終了から2年経過した今年に劇場版作品として公開されるなど、今も根強い人気を誇っているが、この劇場版公開に併せて展開されたのがスマートフォン向けO2Oキャンペーン「あの花Smile Check-in」である。

 このキャンペーンは、アニメで取り上げられたチェックポイント(7カ所)にチェックインすると、それぞれのポイントでオリジナルの壁紙がダウンロードできるデジタル式スタンプラリーで、施策実施期間であった8月1日から9月30日の2カ月間で6.7万チェックインを達成するなど、多くの観光客が秩父市を訪れるきっかけとなった。このキャンペーンが特徴的なのは、その開発において、秩父方面への交通網を持つ西武鉄道株式会社が参画している点である。これによって、目的地のみならずその導線となる交通網も重要な役割を担うことになり、結果としてシステム開発元であるサイバーエージェント社、西武鉄道、秩父市という3団体がWIN-WINの関係になっている点が非常に興味深い。

 最後に取り上げるのが、富山県南砺市限定で視聴可能なアニメ作品「恋旅~True Tours Nanto」である。同名の専用アプリをダウンロードして市内の所定エリアに入ると、そのエリアを舞台としたオリジナルアニメ動画がスマートフォン上で視聴可能できる。いわば、オリジナルアニメの視聴と聖地巡礼が同時に楽しめる仕組みとなっている。このアニメ作品は南砺市が同市にあるアニメ制作会社ピーエーワークスにオリジナルアニメ作品の制作を依頼しているが、同社は以前南砺市を舞台にしたアニメ作品「true tears」を制作、放映し、多くのファンが聖地巡礼で訪問するなど、ファンの高い支持を集めている。この実績に着目した地方自治体がアニメ制作会社に聖地巡礼施策を依頼したという点が、今までにはない聖地巡礼の形として注目される。

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