脳に電流を流して能力を高めるウェアラブル製品--専門家が語る効果と問題点 - (page 3)

Nick Statt (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2013年08月14日 07時30分

 Oxley氏は、foc.usヘッドセット設計時の安全性に関する参考資料として、ドイツのゲッティンゲン大学医療センターが2007年に行ったネズミ実験の結果を提示した。その研究では、tDCSで使用する電流量が動物に病変を発現させる潜在的なしきい値が説明されている。研究者らは、人間に少量の電流を流してもおそらく危険はないと判断したが、「こうしたプロトコルを人間に応用する前に、さらなる動物実験を行う必要がある」との結論を下した。

 Oxley氏は、ドイツのゲオルクアウグスト大学が2009年、人間を対象に行った実験も引用した。その実験報告書には、次のような穏やかな警告が含まれている。「この実験結果は、現在のtDCS安全指針に従って運動野および非運動野にtDCSを適用すると、健康な人間やさまざまな神経疾患患者に比較的軽微な副作用が現れることを示唆している」

 foc.usはさまざまな手段を講じて同デバイスを念入りにテストした。医療用のtDCS機器でないとはいえ、ユーザーに生理的影響を及ぼすからだ。そうした影響は、軽くうずく感覚から、長く続く焼けるような感覚までさまざまだ。さらに、オンラインユーザーの1人が述べたように頭痛や気分の変化が引き起こされる可能性もある。「このテストは第三者である英国のテストセンターによって評価され、実証された。また、搭載されているBluetooth接続機能とそのほかのCEテスト要件のために、Foc.usはFCCのテスト要件を満たす必要もあった」とOxley氏は書いている。

 しかし、スタンフォード大学で精神医学と行動科学の助教を務めるAmit Etkin氏は、Oxley氏の引用した調査結果が示唆するように、tDCSに危険はなさそうだが、問題は当面の安全に対する懸念ではないと断じる。むしろ、tDCSの可能性は全く未知数である。

 Etkin氏は「tDCSがさまざまな研究に使用され、患者に大きなプラスの影響があることを示してきたのは事実だ」と述べた。(同氏の病院は経頭蓋磁気刺激法を専門としている。これはうつ病治療法の一種で、厳格に規制されており、発作を引き起こすリスクもわずかながらある)。しかし、「最悪のシナリオは、具体的な説明を受けていないユーザーが多種多様な方法でtDCSを使用して、彼ら自身もわたしたちも予期していない形で脳が変わってしまうことだ」という。

 foc.usヘッドセットには誤用を防ぐための対策が組み込まれている。中でもfoc.usの「iOS」アプリには、ユーザーが電流のレベルや脳に刺激を与える時間の長さを調節できる機能がある。しかし、最大で40分間使用できるように設計されたfoc.usヘッドセットを、貪欲なゲーマーが2時間、あるいはもっと長時間使い続けるのを防ぐことはできるだろうか。

 結局のところ、これまでより優れたゲーマーになったと思って興奮しているティーンエイジャーにペースを落とせと命じるのは、寮生活をする男子大学生に責任を持って飲酒しろと言うようなものだろう。Etkin氏は「十中八九、大丈夫だろう」としながらも、問題は「潜在的な有害性」が不明なため「極めて重大な」懸念があることだと付け加えた。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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