モバイルOSの多様化を目指す「Tizen」--サムスンとインテルの思惑とは - (page 2)

Roger Cheng (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2013年01月25日 07時30分

 企業はAndroidを「フォークする」、つまり大幅にカスタマイズすることは可能だが、そうするとGoogleやOpen Handset Allianceからのサポートを受けられなくなる。またそうした取り組みはあまりにも面倒で、それだけの価値はないと見なされることが多い。もっとも良く知られた例はAmazonの「Kindle Fire」だ。同端末には変更が加えられたAndroidが搭載されており、通常のGoogleサービスやGoogleアプリを使うことはできない。

 そのためTizenは、より一層の柔軟性を求めている企業に役立つ。とりわけ通信事業者はTizenを、独自のサービスや機能をスマートフォン上で目立たせるための方法と考えている。そうすることにより、通信事業者は加入者との強力な関係を保つことができる。例えば、加入者はGoogleのサービスよりも、通信事業者のサービスを使うようになるだろう。

 NTTドコモのマーケティング部長で、Tizen Associationのメンバーである永田淸人氏は、「われわれが土管化すれば、売り上げは縮小し続けるだろう」と語っている。

 永田氏が「土管化」と表現したのは、ほかの企業が提供する収益性の高いサービスやアプリのために、通信事業者はインターネット接続を提供するだけになる現象のことだ。多くの場合、家庭向けインターネットサービスでは多くの通信事業者が既にこの問題への対応を迫られており、ワイヤレス通信の分野ではその問題を回避したいと考えている。

 一方ではTizenを、Googleが同社のMotorola Mobility部門を通じてパートナーと直接競争する可能性に対抗するためのオープンソース側の防御策、ととらえる携帯電話メーカーもあるかもしれない。そうした可能性をGoogleは否定している。

 一方サムスンは、Tizenは、OSへの依存状態を多様化させるという同社の計画の一環だと述べており、Androidから離れるための方法だという見方を否定している。

 サムスンの米国内のモバイル部門で最高製品責任者(CPO)を務めるKevin Packingham氏は最近のインタビューで、「Googleはわれわれにとって良いパートナーである」と語った。同社はGoogleを支持し続けるつもりである。

 そうしない理由があるのだろうか。サムスンがスマートフォンビジネスにおける落後者と見なされていたのはそれほど昔のことではない。HTCのような動きの素早い企業が、Androidを早い段階で採用することで世間の注目を奪う中、サムスンは遅れを取っていた。しかし過去2年間で、サムスンは指導的立場に躍り出た。これは1つには、「GALAXY S」シリーズや、そのほかの幅広いAndroid搭載のスマートフォンやタブレットのおかげだ。

失敗の歴史

 サムスンがこのOSを進めるのは確かに良いことだ。ただし、このOSには華やかであると同時に、実りのない歴史がある。

 LiMo(Linux Mobile)Foundationは2007年に設立された。最初のAndroid搭載スマートフォンがGoogleとT-Mobile USAから発表される1年前のことだ。LiMo FoundationはLinuxベースのOSを作るために、サムスンやVodafoneといった大企業を短期間でメンバーにそろえた。Verizon WirelessやSK Telekomといった大手企業が参加し、積極的に関与したことで、Tizenは、Android発表に先駆けて、ある程度の勢いを得たように思えた。

 しかしAndroidが成功する一方で、LiMoは、パートナーの数ほどの前進は見られず、中途半端なプロジェクトとして苦労していた。2011年初めになってようやく、LiMoソフトウェアの最初のバージョンが発表されたが、すっかり時機を逸していた。中心的なメンバーはすべてAndroidフォンに完全に肩入れしていた。LiMoプラットフォームは2011年に中止された。

 MeeGo採用した唯一のスマートフォンだったNokiaの「N9」
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提供:Nokia

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