ただ、良くも悪くも、AmazonやNetflix、Google、Spotify、Hulu、Appleなど、いくつかの企業はそうした懸案を徐々に解決してきている。Appleの「iTunes」は音楽業界をデジタル時代に導いた。Spotifyはサブスクリプションプランによって、その流れを加速している。Netflixは、音楽に続いて映画もデジタル時代に導く可能性が最も高い企業だ。Huluはテレビで同じことをしようとしている。Amazonは「Kindle」リーダーおよびアプリケーションで電子書籍業界に活気をもたらした。Googleも「Google Music」や「Google Books」、YouTubeで同様のことを狙っている。
ここで1つの傾向があることに気づいただろうか。これらの企業のほとんどは、実際にコンテンツを作り出す事業を手がけていない。例外はHuluだ。同社の出資者にはNBCUniversalやNews Corporation、The Walt Disney Companyが含まれ、この3社はそれぞれNBC、Fox、ABCのテレビ事業を経営している。この流れに逆行して、GoogleとNetflixは独自のプレミアムコンテンツを作り出すというアイデアを試しているが、大きな影響を及ぼすには至っていない。
ただし、指摘しておくべき重要なことがある。インターネットは「disintermediation(『仲介者の排除』を意味する便利な用語)」に長けていることで知られている。米国の書籍事業の場合だと、仲介者は書店となる。製品を顧客の手元に届けるのに書店は不可欠だ。なぜなら、トラックや在庫、ショッピングモールへの出店費用など、物理的な書籍の流通は難しいからだ。
もちろん、インターネットと電子書籍を使えば、流通はそれよりもはるかに簡単だ。在庫の問題は存在しない。午前3時、息もつけないほど面白い書籍を読み終えたすぐ後に、衝動的にその続編を購入することができる。スマートフォンおよびタブレット向け電子書籍アプリケーションの登場により、PC以外に電子書籍の受け皿となるものをユーザーに提供するという難しさは低減された。それが物理的な店舗であれオンラインストアであれ、人々は今後も書店を見て回って面白そうな書籍を探すだろうが、今やそのプロセスでは、書籍の抄録を読むことまで可能だ。
電子書籍の流通がそれほど簡単なら、書籍販売業者はなぜ書籍を購入者に直接提供しないのだろうか。
第1に、書籍販売業者にいる販売、マーケティング、サポートスタッフは、仲介者への卸売りに力を注ぐ人々であり、膨大な数の潜在顧客への小売を対象とはしていない。流通は簡単かもしれないが、人々に商品を買ってもらうのは簡単ではない。そして、FordやKraft、Timexが持つような消費者との関係性やブランドを、出版社は有していない。
さらに、これは古典的なイノベーションのジレンマである。つまり、重要性を失いつつあるとはいえ依然として現在の売り上げに不可欠な書店の怒りを買いながら直接販売への移行を図るという困難な移行期間を、出版社はどれだけ耐えることができるのだろうか。
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