だが、今は違う。NetApplicationsによれば、4月時点の世界ブラウザ市場シェアは、Internet Explorerが55.1%、Mozilla Foundationの「Firefox」が21.6%、Googleの「Google Chrome」が11.9%、Appleの「Safari」が7.2%だという。
そうした変化に同意判決が重要な役割を果たしたとするのは間違いだろう。ブロードバンド接続が広く普及したことで、ユーザーはブラウザソフトウェアを素早くダウンロードできるようになり、Internet Explorerの競合製品を手に入れるのに、数分、あるいは数時間も待つ必要はなくなった。さらに重要なことは、Microsoftが数年間ブラウザでの技術革新を止め、競合企業のシェア獲得を許していたことだ。ただし最新バージョンの「Internet Explorer 9」では、競争力を取り戻している。
競合企業は新たな市場で優位に立ったものの、同意判決は、デスクトップとノートPC向けのOSの独占という、Microsoftの主な動力源を奪うための手段は何もとらなかった。その市場は重要性が低下しているものの、Microsoftの別の主要製品である生産性アプリケーションスイート「Microsoft Office」とともに、同社のビジネスに力を与えている。それによってMicrosoftは、ほとんどの競合企業には手の届かないような財政的な優位性を手にしている。
同意判決の期間が終了するわずか2日前、MicrosoftはビデオチャットサービスのSkypeを、85億ドルで買収することで合意した。これは同社による買収では過去最高額だ。投資家グループがわずか18カ月前にSkypeを27億5000ドルで買収していたことから、この目を見張るような金額は大きな反響を呼んでいる。しかし、Microsoftはこれほどの金額を支払うことができる。同社の直近の四半期報告によれば、現金保有額は500億ドルにのぼるという(本稿の表に掲載した現金のデータは、Microsoftの年度末業績のデータであり、直近の四半期のデータではない)。さらに、現会計年度の最初の9カ月間で、同社は現金保有額を130億ドル以上増やしている。このペースでいけば、Skype買収に費やした額を12月末までに回収できることになる。
その財務上の優位性は何度となく利用されてきた。Microsoftはビデオゲーム業界への参入に苦労し、「Xbox」事業をプロフィットセンターにするまでに莫大な金額を失っている。また、携帯電話市場やインターネット検索ビジネスに大きな投資し続けているが、いずれも利益を生んでいない。しかしMicrosoftがそうした市場での地位を守るために、必要であればさらに数十億ドルを失うつもりでいるのは確かだ。
Microsoftにそうした非常に費用のかかる新規分野への進出を行う余裕があるのは、WindowsとOfficeが市場で優勢なおかげだ。それは競合企業にはない強みであり、同意判決によってその優位が揺らぐことはなかった。
一方Microsoft側は、同意判決が同社とその企業文化を変えたことを認めている。Microsoftの広報担当ディレクターのKevin Kutz氏は声明で、「この経験はわが社を変え、業界への責任についての考え方を方向付けた」と述べている。Microsoftは以前と変わらず野心的だが、規制の脅威を軽視するような好戦的な巨大企業ではない。最高経営責任者(CEO)のSteve Ballmer氏が、元米司法長官のJanet Reno氏に向かってかつて「クソくらえ」と言い放ったように、現司法長官Eric Holder氏に今また同じことを言うことなど想像もできないだろう。
実際のところ、Microsoftは、9年前とくらべれば、テクノロジ業界ではそれほど支配的な立場にはない。しかしWindowsが優勢であることは、Microsoftに大きな力の源を与え続けている。同意判決にそれを変える効果はほとんどなかった。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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