「iPad」対抗タブレットが学ぶべきこと--「iPod」戦争を振り返る - (page 2)

Donald Bell (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2011年04月15日 07時30分

 iPadの成功(市場シェア90%というのは異常だ)がすべてAppleの功績だと言うつもりはない。だが、今日のタブレット分野の競合他社は、iPodでの10年にわたる革新の歴史がiPadをこれほど強固なものにしているということを、時に見落としていると思う。Carl Sagan氏の言葉を借りれば、「無からアップルパイを作りたいのなら、まず宇宙を発明しなければならない」ということだ。Appleは「iOS」と「iTunes」、iPodを発明し、世界で最も人気のあるモバイルアプリケーションストアを開設することで、iPadを作る前に実質的に10年をかけて宇宙を作り出した。

 競合他社がそれをよしと思う必要はない。しかし、(iPodを通して)iPadに向けられた努力の大きさを理解できないのなら、iPadに取って代わる製品を作ることなど決してできないだろう。

マーケティング

Appleが当初iPodに使用したキャッチフレーズ「1,000 songs in your pocket」(ポケットに1000曲) Appleが当初iPodに使用したキャッチフレーズ「1,000 songs in your pocket」(ポケットに1000曲)
提供:Apple

 ちなみに、AppleはiPodを100万台売るのに2年を要した。初代iPadは1カ月で100万台を達成した。iPodが発売当初にはそれほどヒットしなかったことは忘れられがちだ。iPodは確かにステータスシンボルではあったが、広く一般家庭に普及するまでには何年もかかった。

 iPadは出だしから好調だった。この成功の要因の1つは、Appleが「iPhone」や「iPod touch」などのiOS搭載デバイスで成功を収めたことにより、ユーザーの期待が既に高まっていたことだ。ユーザーは自分が何を手に入れようとしているのか、どのように機能するのか、そして自分はなぜそれを欲しいのかを既に分かっていた。また、現在のAppleが2001年当時とは大きく異なる企業だということも思い出してほしい。iPodが発売されたとき、AppleにはアプリケーションストアもiTunesもなかった。同社が販売していた唯一の「iBook」は安価でキャンディーのような色をしたノートブックだった。

 今日のiPadと初期のiPodの違いでほかに興味深いのは、Appleがこれらのデバイスをマーケティングした方法だ。いくつかの古いゲームと、メモや連絡先を同期する機能を除けば、最初の数世代のiPodが備えていた機能は音楽の再生だけだった。Appleのキャッチフレーズは「1000曲をポケットに入れて持ち歩こう(1,000 songs in your pocket)」というものだった。iPodの発売時、世界を支配していた音楽フォーマットはCDだ。CDであふれた棚がリビングルームに並んでいるような人にとって、iPodはCDコレクションを圧縮して一定のスペースを確保する、非常に現実的なソリューションだった。写真や動画の再生といった機能強化がiPodにもたらされるまでには何年もかかったが、それらの機能が搭載されたときも主役は音楽だった。

 これに対しiPadは、iPhoneやiPod touchと同様に「アプリケーションを利用可能」という謳い文句で販売されている。iPadのセールスポイントは、統合され、クレジットカードでつながった「App Store」が可能にする無限の利便性だ。

 Appleも認めているように、iPadは従来型コンピュータとスマートフォンの要素を併せ持つ中間的なデバイスだ。実用性という観点から見ると、形やサイズ以外では、従来型コンピュータやスマートフォンより優れている点はあまりない。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]