第二に「SARVHをはじめとする権利者側の対応」。該当機器の判決が下された以上、これまで以上に支払いを求める運動を活発化させるべき、とした。東芝以外にもパナソニック、ソニー、シャープの3社がすでにデジタル放送専用録画機を発売しており、今回の判決を受けてそれらすべてへの補償金支払い請求が再開されることになる。
最後に「文化庁による法整備」。これまで「法的義務」と言い続けてきた文化庁の立場からすれば、現状の条文が訓示規定とされたことを受けて不十分な点を解消し、強制的に回収できるよう法自体を改正する必要がある、という意見だ。
法改正の是非はともかく、事実上無効化している録画補償金の問題を含めて再度、行政が話し合いの場を設置することは必要だろう。権利者団体側も、仮にそうした話しあいの場が設けられた場合は「テーブルにつく用意はある」(椎名氏)としており、将来の在り方を含めた考え方を整理する場を求める考えを示している。
消費者への影響という意味では、さすがにすべての購入者からさかのぼって補償金を徴収する、という事態は起こらないと考えられるが、メーカー側の支払い拒否姿勢が明確となれば「ダビング回数のさらなる制限、あるいはコピーネバーの議論も出てくる」(久保利氏)といった別角度からの反撃も予想される。
しかし、今回の判決はむしろ「著作権保護技術があれば補償金を支払わなくてよい、という理屈は通らない」ことを示したものであり、支払いに応じないからコピー制限を厳しくする、という理屈を権利者側が持ち出したのでは消費者の理解は到底得られまい。ことに本件では、当初から「消費者の理解」に訴えた東芝が有利に世論を形成した背景もあり、権利者側にも慎重な対応が求められることになるだろう。
「補償金制度は消費者個別への請求を免れるための一括処理」(同)と指摘するとおり、制度の根底に消費者利便性の向上という目的があったことは事実。一方、東芝をはじめとするメーカー各社が「(著作権保護技術下において)不要と判断できる料金を徴収することはできない」と判断したことが補償金制度そのものへの疑念を生み、これまでさほど関心を寄せていなかった消費者の目を制度に向けさせたことも事実だ。
裁判ですら白黒はっきりつかなかった補償金制度は今後、どのような方向に向かっていくのか。2011年7月24日の放送完全デジタル化を前に、本件当事者であるSARVHと東芝はもちろん、文化庁をはじめとする関係各省庁、放送事業者、各種権利者に各メーカー、そして消費者個々も改めて考えていく必要がある。
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